245 / 259

「久遠」14

「……泰明」  僕が小さく呼びかけると、泰明は憮然とした表情で腕を組んで視線だけ僕に向けてくる。 「お前はいつも何かあったらすぐに、俺に頼ってきたじゃないか。何があったんだ?アイツに頼れないってことは、なんかしらの理由が出来たとしか考えられないだろ」  泰明はどこか悲し気な表情で聞いてきた。今までいろんな事を相談してきた僕が遠慮するのは、泰明からしたら親友ですらなくなったのかと思ったのかもしれない。  僕は意を決して口を開いた。この二日間、神近くんの家で起きたお兄さんからの言動について話をしていく。話し終えると、僕の中のわだかまりが少しだけ軽くなったように思えた。 「お前はどうしたいんだ?」 「僕は正直、どうしたら良いのか分からないんだ。僕のせいで神近くんの実家に、迷惑かけるのは申し訳ない気がして……」 「俺も家族は大事だ。だけどな、好きな奴と本当にずっと一緒にいたいと思うなら、家族に認めてもらえるまで俺は何度だって頭を下げる。もし、出ていけと言われたなら、好きな奴の手を引いて他の土地に移り住んだっていい」  泰明の手が僕の肩に触れる。真剣な眼差しを向けられ、僕の心臓が一気に早くなった。

ともだちにシェアしよう!