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「久遠」25
放課後になると僕は急いで別棟の部室へと向かった。
「部長は俺ですから」と神近くんは出会って間もない頃、そう言っていたはずだ。
凄く部長をやりたかったわけじゃないけど、部長という存在は多少の横暴も許されるものだと僕は思っていた。だから神近くんが「喉乾きませんか?」といえば、僕は昇降口近
くにある自販機まで買いに行ったりもした。
「こっちきてください」と言われれば指示に従って、神近くんの膝の上にも座った。そのままセクハラを受けることもあって、僕はずいぶんと辱めを受けてきた。でも僕は、神近くんが部長だと思っていたから逆らわなかったのだ。僕が部長だとわかった以上は、抗議する権利がある。
勢いよく部室の扉を開くと、ちょうど神近くんも来たところらしく、鞄を机の脇にかけていた。いつもより激しい音が響いたせいか、神近くんが驚いた顔がこちらに向けられる。
「神近くん!!」
さすがの僕も神近くんを睨みつける。
「なんですか。騒々しい」
「聞いてないよ! 僕が部長だなんて!」
僕は扉を閉めると、神近くんに向かってズカズカと歩み寄っていく。
「だからなんですか。俺に聞いてこなかったじゃないですか」
「だって最初のときに、神近くんが部長だって言ってたじゃん」
「あのときは本当に俺が部長になるつもりでした。でも、部の中で学年が上の生徒がやるのが通例だからって、顧問に言われたんです」
神近くんは眉を顰め、溜息を吐き出した。
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