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「久遠」28
「神近くん……」
僕もパズルのピースを落とすと、神近くんの指先に自分の指を絡ませた。パズルがカサカサと音を立てて崩れていく。
「だから遠慮なく、取り憑かれて大丈夫ですよ」
「えっ! それは嫌だよ!」
さすがにゾッとして取り乱す僕に、神近くんは「やっぱり馬鹿ですね」と言って緩く口角を上げた。小さく笑っている神近くんの茶色い髪が揺れるたびに、夕日のオレンジが明るく光らせる。
ふと、神近くんの家に初めて行ったときのことを思い出す。
あの日、神近くんがお腹を抱えて笑っていたのだ。僕が神近くんに先輩面したり甘えたりする言動が、神近くんのツボにどうやらハマったようだった。その時、夕日に照らされた神近くんがあまりにも綺麗で……僕は恋に落ちたのだ。
「でも――」
あの日の答えが今なら変わっているように思えて、僕は少し照れくさく思いつつも口を開く。
「神近くんなら、僕を守ってくれるでしょ?」
この際、先輩後輩関係ない。あの日の再現をもう一度したかった。神近くんが素を露わにして、僕と向き合ってくれたあのときみたいに。
僕はギュッと指先に力を込めた。神近くんはキョトンとした表情をした後に、次第に優しげ
な表情に変わっていく。
「ええ。もちろんですよ」
絡めた指先から伝わる熱と力強さ。神近くんが照れたように笑い出し、僕も釣られたように笑い出す。
これから先も僕は神近くんとこうして笑っていきたい。
鞄にぶら下げているお守りをこっそりと反対の手で包み込み、僕は心の中でそう念じたのだった。
END
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