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第48話
余程衝撃的だったのだろう……葵は見たこともないような顔で口をパクパクさせていたが、声にならないようだ。
ふん。ざまーみろ。
俺の愛情を軽く見るからだ。
「な、ななな、何言ってるの!?そんなの無理でしょ!?」
「無理じゃねーよ。お前が自分に自信なくて、女と比べて落ち込むんだったら、今度からは俺が抱かれりゃいいって話だろ?」
「いやいや、そういう問題じゃないから!」
「そういう問題だって!別に俺は、お前と繋がっていられるんだったら、挿れようが挿れられようが、どっちでもいい」
「えええ!?」
「俺だって立場が変われば『面倒』で『できそこない』になるんだろ?お前よりきっと、慣れるまで大変だろうけど、でも、俺はそれでいい。お前が俺のこと、好きでいてくれるんだったら、俺が抱かれる側になるから」
「……だって……そんな……」
思ってもなかったのだろう展開に、葵は目に見えて困惑していて。でも、そんな顔もかわいく見えるんだから俺も大概だ。
かわいく狼狽えてるから、もう少し押してみたくなってしまう。
「別に役割分担を最初に話し合ったわけじゃない。何となくでこうなってるんだし、今改めて交替したって支障はないだろ」
「支障、あるよっ」
「あるって、何が?」
「だって、僕の方が背も低いしっ」
葵の口から飛び出した反論に、思わず苦笑い。だってさ。
「んなの、関係ないだろ。女の方が背の高いカップルなんて、世の中には五万といるぜ?」
「それは,そうだけど……僕の方が、経験値が低いし…」
「何?それは俺の方が遊んでるって言いたいのか?」
「ちがっ、僕は先輩しか知らないから、うまくできるか分かんないし…」
「ばーか。誰だって最初は下手くそだよ。俺だって抱かれるのは初めてだから、うまくできないかもしれないし。そんなの、同じだよ」
「………でも……でも……」
さっきまで次々と言葉が飛び出していた葵の口が急に重くなり、何だかごにょごにょと口ごもりだした。
両手をもぞもぞと絡ませながら、下を向いて顔を赤くしている……何だ?何が言いたいんだ?
「………あの……あのね……ほら、小さいし……僕の……」
「ん?小さい?……何が?」
「っ!……だからっ……もう!いじわるっ!」
そう言ってますます顔を赤くした葵は、俺の耳もとに口を寄せると……小さな声で答えを囁いた。
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