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第50話

「俺は、触られたくないくらい嫌がられてるんだって思ったら苦しくて……でも、それでも俺の近くにいようとしてるお前を失いたくなくて……きっぱりケリをつけて……で、お前に全部話そうと思ってたら、今日、松野は家の前で待ち伏せしてた。部屋の中には入れたくなくて、外で言い合いになってたらお前が来た……これですべてだ。もう、隠しごとはない」 先輩はうつむいていた顔をもう一度上げると、「信じてくれ」と言った。まっすぐ僕を見る目に、嘘はないと思う……嘘はないって、僕も信じたい。 「……もう、いいよ。僕もちゃんときけばいいのに、ききもしないでいろいろ考えすぎて……先輩を疑ってしまったし……僕こそ、ごめんなさい」 頻繁に鳴る電話におびえる前に、尋ねてみればよかったんだ……電話の相手は誰なの、って。 怖がって、不安になって、自分の気持ちをごまかして……そのせいで、歯車が狂ってしまった。二人がうまくいかなくなったのは、決して先輩のせいだけじゃない。 「……葵のせいじゃないぞ」 「……でも、先輩のせいでもない」 お互いにお互いをかばい合って……目があったとたん、二人ともふき出してしまった。 ほんと、遠回りばかりしてた。心はちゃんと、寄り添っていたのに…… 「───あのさ、今日、泊まっていくだろ?」 明日は休みではないけれど、こんな時間に帰るのも大変だ。何といっても乗り継ぎが悪いし……先輩の家にこのまま泊まっていくのがいい……と、僕も思う。 「うん。そうしていいなら」 「じゃ、決まりな……それからさ…」 「うん?」 「あのさ……その……今夜は、一緒のベッドで寝ても……いい、よな」 「うん!もちろん!」 先輩のお誘いに、ためらうことなく返事をしたら、先輩は嬉しそうな表情。 僕の大好きな笑顔が溢れていた。 end

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