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「さぁ。……自分の胸に手を当てて、よーく考えてみろよ」 「……」 「オレは、大方予想がついてるけどね」 それは──四時間目の授業が始まる直前。 実験室に入ってきた山本に、自席に向かう道すがら小さな手提げ袋を放られる。 『……は? てか、何??』 『2組の桐谷からだ』 華やかなリボンのついたそれは、見るからに本命チョコで。 『も、貰ったん……、だけど……』『……へぇ。誰から?』『………桐谷、さん』──さくらが捨てようとしていた、桜色の可愛らしいリボンの付いた本命チョコが、桐谷からのものとは思えなかった。 それに──朝からそわそわしていたさくらが、移動教室のあった四時間目以降、浮かない顔をしている。 「……教えろ!」 緩みかけていた手に力が籠もり、凄い剣幕で夏生に詰め寄る。 その自分勝手な言動に、募る嫌悪感。 それでも。色んな感情を飲み込み、意を決した夏生が口を開く。 「頼まれたとはいえ、……桐谷に、チョコ渡されたんだろ」 「……!」 皆まで言わずとも、直ぐに状況を理解する山本。その表情が、みるみる堅くなっていく。 再び緩み、やがて離される手。 「………悪かった。いきなり殴ってよ」 「……」 視線を下げ、ボソリとぶっきらぼうに、山本が謝罪の言葉を口にする。別に、お前の為じゃない──そんな気持ちが、夏生の口を噤ませる。 片手で後頭部をガシガシした山本が、教卓に置かれたチョコを鷲掴むと、そのまま廊下へと出て行く。 「……」 それを見送る事も無く。肩を竦め、大きな溜め息をつく。 マリオネット。キューピット。 そんな役目を担わされたような現状に、悔しさから両手のひらを握り締める。 「……悪いと思ってんなら、オレから奪おうとすんなよ」 「目障りなのは、お前の方だろ……」

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