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第1話
大学2年の時、ぽつりと彼が溢した言葉が自分の其の先を左右した。
今でもはっきり思い出せる。
あれは、彼の本音だったのか
それとも…
今となってはもうわからないその言葉に、俺は生きる道を見付けた。
「ただいま!
今日のご飯なに?」
「豆腐ハンバーグに大根の味噌汁。
あと、外のオクラと茄子が食えそうだから揚げ浸ししよう…」
「うまそう!
じゃあオクラ取ってきてやるよ!
行こう!」
会話の途中で裏の畑へと駆けていってしまった子供が開けっぱなしにした扉から生温い風がはいってくる。
すっかり夏のにおいだ。
「って、鋏も袋も持って行ってねぇ。」
手を洗い流し、鋏と袋を持って後を追い掛けた。
この会話だけを聞けば、何処かの家庭の様だがここは家じゃない。
ここは子供食堂。
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