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第27話

ふっと意識が覚醒し、俺はゆっくりと瞬きした。 瞬きしながら辺りを見渡してみたが、自分の部屋ではない見慣れない場所に首を傾げた。 「ここ、どこだ?」 すぐ真横にあったカーテンの隙間から見える空は、少し薄暗かった。 今何時だ? 時計を探そうと身体を動かすと、腰に鈍い痛みが走った。 「イ"ッッ!!」 ズキッと痛んだ腰に、短い悲鳴をあげて、思わず腰に手を当てた。 なんだこの痛みは……? こんなの初めてだ 動けないほどじゃないけど、今まで経験したことのない痛みに、驚きが隠せない。 そこで、少し動いたことで気付いた、 傍らにある温かな存在に。 「え? お、及川さん……」 安らかな顔をして、自分の隣で眠る及川さん。 なんで? そこで更に気が付いた。自分の喉に違和感があることに。 腰の痛み、喉の違和感 そして隣で眠る 及川さん……  「あっ!!」 思わず出してしまった声を引っ込めようと慌てて口を塞ぐ。 ソロリと隣を見ると、及川さんは俺の声に気が付かず眠り続けていた。 思い出したよ……俺、及川さんに告白されたんだった。 そして、セック…… あぁあーーーー!! 心の中で呟くのも恥ずかしい! 及川さんに身体を隅から隅まで、見られたんだよな…… は、恥ずかしい…… でも、 幸せだった…… 俺、及川さんにずっと嫌われてると思い込んでた。 ……でも、違ったんだ。 嫌われてなかった、及川さんは俺のこと好きだったんだ。 良かった スゲー嬉しい 上がっていく口角を戻すことが出来ない。 及川さん…… この愛しく想う気持ちを抑えられず、 そっと、隣で気持ち良さそうに眠る及川さんの頭を撫でた。 「ん……」 及川さんが短い声をもらして、少し身じろぎした。 あっ、ヤベ! 起こしたか? 「フフフ……トビオちゃん……」 目を閉じたまま笑う及川さん。 これって、もしかして……寝言? えっ!? 及川さん寝言で俺の名前呼んだ……?  「トビオちゃん……好き」 好き………… 寝言の告白。 及川さん……あんた今、どんな夢見てるんだ? 眠っててもドキドキさせてくれるなんて。 「及川さん、本当にあんたって人は……」 こんなに俺をドキドキさせて……心臓を壊す気か? 嬉しさで笑顔にならずにはいられない 「及川さん……俺も、あんたが……」 好き 彼は眠っているけれど、口に出すのが恥ずかしくて、心の中で呟く。 好きって伝えたら、及川さんどんな顔するかな? 考えただけで笑顔になれる。 ますます上がっていく口角。 「飛雄? 何笑ってんの?」 「は?」 にやける口を押さえていると、どうやら目が覚めたらしい及川さんが、不思議そうな顔をしながらこちらを見つめていた。 「あ……及川さん、オハッス……」 顔を隠そうと逸らしながら挨拶すると、手に温かいものが触れた。 「トビオちゃん、おはよ」 手を握られて反射的に及川さんの方を見ると、爽やかな笑みを浮かべて俺の手の甲にチュッとキスをしてきた。 「な、なななな、なな、何やってんですか!」 手の甲に触れた柔らかな感触に、ジワジワと顔が熱くなっていく。 熱くなった顔を押さえながら慌てて手を引っ込めようとしたが、満面の笑みを浮かべた及川さんに離さないと言わんばかりに強く握られた。 「トビオちゃ~ん、俺達セックスした仲なんだから手の甲にキスしたぐらいで照れないでよ。 トビオちゃんが慣れるまで、毎朝おはようのチューしてあげよっか?」 「そ、そんなのいらねーっす!」 「嬉しそうな顔したり、真っ赤になったり、本当に可愛いねトビオちゃん。 あんな嬉しそうな顔して、そんなに及川さんとセックスしたのが嬉しかったの? すんごいあんあん言って気持ち良さそうだったもんね」 ずっとニヤニヤしながら、恥ずかしいことばっか言ってくる。 まあ、あの時の苦しそうな顔よりは何百倍も良いけど、俺ばっかりドキドキさせられて、なんかムカつく…… 「お、及川さんこそさっき嬉しそうな顔しながら、寝言で何回も俺の名前呼んでましたよ!」 「……え?」 「何回もトビオちゃんトビオちゃんって言って、好きとか言いながらニヤニヤ笑ってましたよ」 そう言うと及川さんはさっきまでのニヤニヤ顔を消して、目を見開いて湯気が出そうなほど顔を真っ赤にした。 え? なんだその反応は? なんか可愛いんですけど…… 及川さんの赤面を拝める日が来るなんて。 その顔を間近でもっと見たくて、俺はズイッと近寄った。 「ちょっと、今俺の顔見ないで! 絶対変な顔してると思うから!」 枕に顔を埋めて必死に隠れようとするのを引っ張って妨害する。 「変じゃないっすよ! 可愛いからよく見せてください!」 「嫌だよ! 見んな! もぉーーーーまた俺、寝言で飛雄って言っちゃったんだ!」 「え? また?」 またってなんだ? 不思議に思いながら首を傾げていると、及川さんが枕を少しずらし目だけ出して、こちらを見つめてきた。

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