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第28話
「中学の時からずっと好きだったって言ったでしょ」
「あ……ハイ」
及川さんはまだ枕で目から下を隠したまま耳まで真っ赤にしてるくせに、突然真面目な声を出してきた。
だからこちらも真面目に聞かないとな……
「でも、俺達は男同士だからこの恋はいけないって、諦めないといけないって
そう思ってお前を忘れるために、無理に好きでもない女の子達と付き合ったことがあったんだ」
「…………」
真面目な声、真剣な目で話すから何も言えずに、ただ黙って話を聞くしか出来ない。
そんな俺を見て及川さんは小さく笑って、枕を膝の上においた。
「最低なことに沢山色んな女の子を傷付けた。
もちろん付き合ったからには、ヤることもやったよ。
彼女達は幸せそうな顔をしていたし、実際そうなんだと思ってた。
でも朝俺が起きたら、彼女達は泣いたり、不機嫌な顔をしてることが多かったんだ。
どーしてだと思う?」
「どーしてっすか?」
質問の答えが本当に分からず首を傾げた。
すると及川さんは今度は困ったように笑った。
「泣いてるわけを教えてと頼んでも教えてくれなくてね。
一番最後に付き合った元カノが、教えてくれたんだけど……」
そこまで言ってから及川さんはまた、耳まで真っ赤になって俯いた。
言い淀んだ言葉の続きが気になって、俺は及川さんの腕を急かすように引っ張った。
「なんで泣いてたんすか?」
「……とびおって誰?
って言われたんだ……」
「え? どーいう意味……?」
とびおって俺の事だよな?
及川さんの元カノがなんで俺の名前を口に出すんだ?
「今まで気が付かなかった、だって寝言だったんだもん。
寝てる時に言う言葉なんて、誰かに教えてもらわないと分かんないでしょ……」
「え?」
「もぉーーーー……これだけ言ってもまだ分かんないの?
つまり、
俺はお前のことがずっと好きすぎて、彼女と一緒に寝てる時も
お前のこと求めてたってこと!!」
『トビオちゃん……好き』
ドキドキしたあの、及川さんの寝言……
なんだよそれ……元カノ達の前でも、あんなニヤニヤして俺の名前を呼んでたのかよ……
そんなにずっと俺の事が好きだったんだな
恥ずかしい……でも、スゲー嬉しい……
「寝ながら飛雄のこと呼んじゃうぐらい好きで好きで。
もう駄目だなって、この気持ち押さえ込むなんて無理。
忘れたくても忘れること出来なかった。
隠せないほど、無意識に飛雄を求めちゃうぐらい
どーしようもなくお前が好きなんだって……気付かされたんだ。
だから、勇気出して飛雄に告白しようって、あの日会いに行ったんだよ」
部活帰りにカレー食わせてもらった、あの日に?
じゃあ、あの時俺が逃げなかったら。
ちゃんと及川さんと向き合ってたら、あんなに苦しまずに、悲しまずにすんだのか。
本当になんだよそれ……
「だったらあんなことしないで、もっと早く告白してくれれば、こんなにお互い苦しまずにすんだのに……
もう、及川さんの苦しそうな顔見たくないです」
「ゴメンね
本当に……飛雄を沢山傷付けた。
だから、もう一度ちゃんと伝えるよ」
今まですれ違って、不器用な二人の間にあいていた距離を縮めるように、ゆっくりと及川さんが近付いてきてくれる。
俺も及川さんに触れたくて、そっと手を伸ばした。
気持ちに応えるよう、その手に指を絡めて、ギュッと握ってくれた。
「飛雄、好きだよ 愛してる」
「もう一度……」
もう一度言って、何度でも聞きたい
「愛してる……ずっと傍にいて……」
「はい」
俺達は触れるだけのキスを何度も交わして
微笑みながら優しく抱き合った……
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