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第348話
「さあっ、決戦の時だ!!」
朝を迎えて、俺が身支度を整えていると、
突然三野村さんが勢い良くドアを開け放ち、部屋に飛び込んできた。
日向みたいにスゲーデケー声だな。
やる気満々な三野村さんに負けないように、俺も負けじと声を張り上げる。
「オハッス! 三野村さん!」
「おーおー元気いっぱいだねとびおちゃん!
決戦の時に相応しい、良い面構えだ!」
決戦って、俺達は及川さんと戦うのか?
まぁ、逃げる及川さんを捕まえるって言うか、救い出すと言うか。
昨日の及川さんの様子から見て、彼は絶対に俺の顔を見た途端逃げて、まともに話を聞いてくれないだろうから
2人に捕まえてもらって、真っ正面からサーブをぶちかますしか方法はないだろう。
そうなると確かにこれは戦いなのかもしれない。
そんなことを考えていると、突然インターホンの音が鳴り響いた。
と、思ったら、それを鳴らしたであろう人物が勝手に入ってきて、勢い良く部屋に飛び込んできた。
「さあっ! 決戦の時だよ!!」
「きっ、木園さん!?」
「わぁ~~爽香ちゃんもやる気満々だね!」
木園さん、インターホン押した意味あるのか?
それに木園さんが勝手に入っても、三野村さんはそれが当たり前みたいな感じだ。
そして、2人一緒の決戦って言葉……
「決戦って、2人でそう話してたんすか?」
「話してたって?」
「だって2人とも同じ言葉を使うから」
そう言った途端2人が顔を見合わせて、ポッと頬を赤らめた。
「もぉ~~真似しないでよ爽香ちゃん……」
「真似なんかしてないしっ!
だって、本当に決戦じゃんか……
塞ぎ込んでた及川くんがとびおちゃんの愛の力で蘇ってラブハッピーエンドでしょ?
決戦じゃん?」
「らっ、ラブハッピーエンド……?」
「もぉ~~爽香ちゃんってばー
エンドじゃ、2人のラブが終わっちゃうよ?」
「じゃあ、ラブフォーエバーねっ!」
「そーそー! フォーエバーだよ!!」
フォーエバーってどー言う意味だろう?
まだ顔を赤くしたまま2人は、慌てたようにはしゃいでいる。
なんか、無意識に同じ言葉を使ってしまい、恥ずかしいけどでも嬉しそうにも見えた。
「なんか、2人の方がラブラブ?なんすね?」
たぶん2人は付き合ってる?
付き合ってなかったとしても、2人は両想いで、これからお互いの気持ちを知ったら付き合うことになるんだろうな……
前までの俺だったら、そんな恋とか愛だとか、両想いとか片想いとか
そんなこと、考えることもなかったんだろうな……
バレーの事ばっか考えて、バレーだけの人生で終わってたと思う。
バレーばっかなのは今も変わらないし、それだけでも十分幸せだって思えるけど。
でも、及川さんと出会って
憧れて、追い掛けて
無茶苦茶で、最低だって思って悩んだりもしたけど……
でも、
及川さんが手を伸ばしてくれたから
好きだって言ってくれたから
俺も自分の気持ちに素直になれたから
それで、日向と月島とぶつかり合うことが出来たから
2人と友達になれたから
これって全部……
及川さんが全て教えてくれた……
だから、こんなにもポカポカした気持ちにも気付けるようになれた。
スゲーあったかくて、笑顔っていうか、
思わずニヤニヤしてしまう。
こんな感情を与えてくれて
ありがとう及川さん……
「らっ、ラブラブって!? 何言ってんの!?」
「そっ、そんなんじゃないしっ!!
ラブラブなのは及川ととびおちゃんでしょ!?」
三野村さんと木園さんはさっきより更に真っ赤になって、慌てふためいている。
あーー、やっぱ俺って分かるようになったんだな……
もう、2人の顔にお互いが好きだって書いてある。
顔に書いてあるって意味分からんとか思ってたけど、本当に書いてあるんだな。
フッと、思わず笑みを溢すと、2人が同時に頬を膨らませた。
息ピッタリ
「ちょっと、とびおちゃん? 年上をからかったら、おしおきだよ?」
「すんませんっ!! でもホラッ、そろそろ出ないと、決戦どころじゃなくなりますよ?
早く決戦会場に行きましょう!」
「もっ、もぉ~~っまたからかって!
決戦とか、とびおちゃんも使わないでよ!」
「すんません。2人だけで使いたいっすよね?」
「本当怒るよ!」
「……とびおちゃん……及川くんが話してたのとなんか違う……」
三野村さんに怒られながら、俺達3人は大学へと歩を進める。
及川さん……
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