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第1話
事の始まりは、陽向 の一言。
「ユキ先輩~、ちょっといいですか。」
浅川 陽向
中学の頃のバスケ部の後輩で
高校になってバスケ部を辞めても
なついてくれてる後輩だ。
「どーした??」
八神 と話してた俺は
八神に断って陽向の元へ駆け寄る。
その時に、八神の顔が険しくなってることに
気づいていれば、
今こんなことになってなかったかもしれないのに。
「実は、バスケの大会に出るはずだった
一人が怪我をしちゃって、先輩に出てもらえないかなって。」
「え、でも大会って…」
「そんな大事な大会じゃないんですよ?
市のお遊び感覚な大会で
初心者の集まりで出てるグループもいるし…。
ただ、その大会の主催者が
実は顧問の恩人的な人らしくて
欠場、とかはちょっとまずいんですよ。
まあ、やるからには勝つつもりですけど。
経験者のユキ先輩にぜひお願いしたいなって。」
まだ返事を渋ってる俺に陽向は、
子犬のような目で俺を見る。
「部に戻れなんて言わないので
また、ユキ先輩と一緒にバスケしたいです。」
あぁ、陽向の、この目に俺は弱いんだよなぁ。。
「…わかった。」
そう答えると、
陽向は嬉しそうに、ガッツポーズを決めて
「部長に伝えてきますね!」と走っていった。
それを見送ってから、八神の元へ戻ると
「あいつ、誰?」
って聞かれる。
「中学の時の後輩、陽向。
なんかバスケの大会に誘われてさ。
あいつに頼まれると昔から断れないんだよな。」
「へー。」
聞いたくせに、興味なさそうな返事。
しかもなんかちょっと苛立ってて。
「何、怒ってんの?」
「…別に。」
そのときは、夏の暑さか何かで苛立ってんのかなって
勝手に勘違いしてたんだ。
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