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【ほのぼの】シーグルの日記(1)
俺の両親はバカがつくくらい仲が良い。俺が生まれた時に結婚しているから、既に13年は経過しているのに、未だにその熱は覚めていないようだ。
妹や弟も生まれた。母は特殊なスキルを持っている為、子が出来れば産まれるのはあっという間だ。竜人族は子がなかなか産まれないというのに、母はどんどんその数を増やしてくれる。祖父殿や祖母殿もこれにはとても喜んでくれる。
何よりも驚くべきは、この母のスキルが子にも多少受け継がれている事だ。
俺は父の剣士としてのスキルの他に、母のスキル「安産」もレベル50くらいで受け継いでいるらしい。
将来は産む側になるのだろうな…と思い、できるだけ母の出産には携わるようにしている。将来、子を産んでもいいと思えるような誰かと出会った時にまごつかない為だ。
「シーグルはすっかり大人っぽくなったよね」
穏やかに微笑む母はとても綺麗だ。そしてその腹は、僅かに大きくなっている。子が母のスキルを受け継いでいる事を知って、両親は子作りに躊躇いを持たない事にしたらしい。
元々愛情溢れる二人だ。溢れたぶんだけそちらに傾けている。一番下の妹も今年で5つ。スキル特化を思えばこれでもゆったりとしたペースではないだろうか。
「本当に、ユーリスに似てきたね」
「まだ父上のような立派な男にはなれません」
恥ずかしながら言えば、母は笑って「あっという間だよ」なんて言う。同時に頭を撫でるのだから、子供心に嬉しいやら、微妙な悔しさやらで複雑だ。
身長はまだ少しだけ母の方が高い。それでもあと少しだと思う。育ち盛りというものらしく、ぐんぐんと背は伸びている。いつか母の背を超えるのだろうと思うが、その日が楽しみでもある。
勉強と、それ以上に剣術や魔法の特訓をして、父の背を追っている。
父はいつまでも俺の憧れだ。冒険者として世界を回っていた父は、色んな事を知っている。10歳の時には初めて国を出て1ヶ月ほどの冒険旅行に出た。何故か母も。
理由は「マコトの料理はとても美味しい」という事らしいのだが、それならマジックバッグに料理を詰めて貰えばいいのにと思った。
でも、言わなかった。結局父は母を片時も手放したくないのだろう。先の発言は言い訳だ。
何にしても楽しかった。弟妹のお世話などもしていたから、母も少しそこから離れて羽根を伸ばしていたようだった。そして、母の作る料理は本当に美味しい。
父と一緒にモンスター討伐をしたり、野宿の練習をしたり。夜には星を見上げて草原に寝転び、旅の思い出や両親のなれ初めなんかを聞いた。
母は異世界人だが、父と最初に出会えてラッキーだったと言う。そうじゃなかったら、今頃どうなっていたのか。
でも思うのだ。母はきっとどこででも愛される。
スキルがあるとか、そういうことではない。優しくて、愛らしくて、母だというのに可愛いと思える時がある。一緒にいる人を和やかに、そして温かく包んでくれる木漏れ日のような部分がある。これを嫌う人はいないだろう。
俺が将来誰かと結ばれるなら、母のような人がいい。そんな風に思っていると、父が冗談のように「マコトは俺のだぞ」と穏やかに笑う。
…あれは、息子に対する牽制だと思う。そして俺は自分の母となんて考えるほどの鬼畜ではない。何を心配しているのだ、父上。
鬼畜と言えばランセル様か。2歳年上のランセル様の子アンテロとは今も兄弟のようだ。彼にも一人弟がいて、俺は実の弟妹の他にそっちも弟のように可愛がっている。
アンテロの母上グラース様と俺の母はとても仲がいい。二人とも甘党で、母の作る菓子をグラース様はとても喜んでいる。週に1回は会って、お互いの近況や子育ての相談をしている。
元軍人であり、子育てを離れれば未だ軍人のグラース様は違う意味で憧れだ。主にランセル様をいいように手の上で転がす手腕が凄い。
あの方は切れ者で、緑竜軍の総長をしていると言うのに。
グラース様いわく「慣れとコツだな」なのだそうだ。カッコいい。
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