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【日常】エッツェル留学記7(1)
グランに告白された。しかも本気のやつ…。
寝ても覚めてもこればっかり。なのに忘れてってどういうこと? え、僕伴侶にとか言われたのに、それも忘れるの?
やっぱり、泣いたから誤解されたのかな? うれし涙だって言いそびれたから、拒絶とかに取ったのかな?
それに、グランとても苦しそうだったし、困ってた。ううん、困惑してた? なんか、シーグル兄上が時々あんな顔をしてた気がする。
「エッツェル、どうした?」
対面に座っているランス様が疑問そうにしている。僕はそれに、ぼんやりと答えた。
「グランに告白されたんだけれどさ」
「なに!」
「何か、ちっとも幸せそうじゃなくて悩んでる。僕が泣いたから誤解されたのかな」
「いや、ちょっと待て!」
ランス様は僕の話を止めて、次に溜息をついた。困ったように額に手をあてて、一つずつ状況を確認していく。僕はそれに一つずつ答えて、状況を説明した。
「…なるほど、それで焦ったのか、あの馬鹿」
「僕、避けられているんじゃないかと思ったんだけど」
「誰にだ?」
「グランに」
「そんなわけがないだろ。あいつはお前に会って数日で、お前の事を好きになっていたぞ」
「えぇ!!」
それはまったく聞いていない。ってか、気付かなかった…。
「え? え! そんなの全然…」
「くっつきたがっていただろ」
「だって、あんなの母上や姉上はわりといつもで、ロアール兄上も…」
「お前…。家族がするのは親愛だろうが、他人がすると意味が違うだろ」
考えた事なかった。あのくらいの距離はわりといつもの事で、人懐っこい性格なんだくらいしか考えてなかった。好きだって、そういう遠回しな接し方なんて、そんな…。
途端に、カァァと体が熱くなった。触れた手とか、背中に負ぶさるようにして話したのとか、一緒に抱きしめられて寝たのとか…。
「お前は本当に、恋心というものに疎い」
「仕方ないじゃん、拗らせてたんだから」
「猪突猛進でそれしか見えなかったとしても、少しは気付いてやれ」
難しいよ、直接言葉にしてくれないと。それに、僕は自分が好かれるなんて思わないんだから。僕だけを愛してくれる人なんているのかって、思っているんだから。
「自分への自信のなさから、余計に分からなくなったか」
「…うん。でもそれなら、どうして忘れてなの? 僕、避けられてなかった? 二人になると距離があったり、人前だと逆にベタベタしてみたり」
「人前での行いは牽制だな。まぁ、子供っぽい独占欲とも言える。二人の時に素っ気なかったのは、私達があいつに待てをかけていたから距離を取ったんだろう。近くなると我慢が出来なくなるからな」
「何それ!」
そんなの知らない! っていうか、どうしてランス様がグランに待てをかけたの?
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