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【R18】寡黙な騎士をこの手に抱いて(4)

 城にある俺の部屋に、俺は一人でいる。妙な虚しさが俺の胸を埋めている。  分かっている。俺はどこかに素直さをいうものを置いてきた。今幸せにパートナーを得られているのは、皆真っ直ぐで素直な者ばかりだ。  それに対して、俺はどうだ。一人に狙いを定めているにも関わらず、進展のないまま100年以上がたっている。 「はぁ…」  いっそ、俺から迫ってみるのがいいのか? しなだれかかってあいつを誘えばいいか。そんな自分を考えて、即座に「ない」と言えるあたりがダメだ。どうしてもそんな自分にはなれない。 「シーグル様?」  ドアをノックする音と、続いてした声。硬い表情のまま、ルーセンスが顔をだす。暗い室内は月明かりだけが青白く差している。それを不審に思ったのか、警戒心などなく近づいてくる。  本当に間の悪い奴だ。俺は今、機嫌が悪い。 「どうかなさいましたか?」 「いや」  いつも以上に素っ気なく答えれば、ルーセンスは更に近づいてきて俺の顔を見る。これだけ色々されて、それでもコイツは俺を警戒しない。  ふと、触れてみたくなった。頬に手を触れ、ビクッと僅かに震えて体が逃げる。その腕を掴んで引き寄せ、俺は口づけてみた。  ゾクリと背に甘く響く。俺は間違いなく、コイツに欲情できる。触れたままの唇は、その先に進まない。驚いて目を見開いたままのコイツは、この先なんて考えていないだろう。 「シーグル様?」 「お前は俺に、欲情しないんだな」 「え?」  戸惑うように俺を見る赤い瞳が、狼狽している。その奥に、俺は確かにお前の熱を見る。だがお前がそれを認めないなら、俺はどうしたらいい。押し切ればいいのか? 「…冷めた、もういい」 「シーグル様」 「寝る。明日はいつも通りだ」  言って、背を向けた。その背後で立ち尽くしていた奴は俺の拒絶を感じ取ったのか、出ていく。  何一つ上手くいかない。俺はこの思いを、どうやって成就させればいいか分からないままだった。

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