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【イカレ竜・R18】もふもふ王国への野望(1)

「なんか、色々落ち着いてしまったねぇ」  まだ僅かに寒さを残す春の始め。僕は執務室から抜けるような空を見上げていた。  友人であり弟のように可愛がっていたシーグルは、長年の片思いを最近成就させたらしい。綺麗どころで引く手数多の彼が何を好んでか、だいぶ年上の近衛騎士を選んだ。  まぁ、ドSとドMで良いバランスかもしれないけれど。  弟のイヴァンも、最近ようやくハリスを手に入れた。ホクホクと嬉しそうに報告にきた、僕よりも逞しくなった弟の緩い顔を見るとただ「おめでとう」としか言えなかった。まぁ、実際そう思っている。  なにせ、性も愛も芽生える前のほんの子供の頃から想い続けた相手と結ばれたのだ。自分の倍以上生きているハリスとの、数百年越しの恋が実ったのだから。 「…つまらない」  そろそろ僕も動かなければいけないのかもしれない。ふと、置いて行かれている感じがしてそう思い、それならばと腰を上げた。  母様と父様の前に出た僕は、婚活を理由に国を出る事を申し出た。勿論、これは本気。行く場所も決まっている。 「お前、本当にゾルアースで婚活するのか?」  母様は僅かに眉根を寄せる。それというのも僕の母様は獣人で、年齢を重ねた今も美しく強く、銀の耳と尻尾が魅力的だ。  僕の理想であり、僕の目標であり、このような伴侶を得たいという昔からの憧れ。 「獣人の結婚って、基本的には多重婚ではありませんか?」  王位を継いだ父様が、何の気の無い顔で言う。  この人も年を重ねても変わらない。なんというか…食えない、油断できない、何を考えているか分からない、ド変態だ。  大いに思うけれど、僕は間違いなくこの人の血を継いでいる。気性や執着は多分イヴァンの方が継いでいるけれど……変態性はきっと僕の方にきたんだろうな。残念だ。 「軸となる相手がそう望めばな。この場合、アンテロが複数の相手を求めればそうなる」 「何人までなら受け入れ可能ですか? 二桁まで?」 「アホか!」  母様の一喝、痺れるんですよね。  当然のように、さすがに二桁の妻を平等に愛せるかと言われれば自信はない。精々が片手程度だろうと思う。  それでも一人とは思っていない。好みが合えば、何人でもいい。 「精々五人程度にしておけ。それと、平等に愛せないなら一人に絞れ」 「それは、何故?」 「獣人は平等に愛されていれば伴侶同士で争いなどない。だが愛情が偏れば途端に嫉妬が激しい。最悪、伴侶の内部で殺し合いになるぞ」  母様の忠告は、刻んでおいた。当然、平等に愛するつもりだ。 「分かりました、平等に愛します」 「あくまで複数か。まったく…」  言いながらも、どこかで諦めていたっぽい。  母様は手紙を書いてくれた。そして数日後、母様の実家から快く受け入れてくれるとの連絡がきて、僕の思惑は一歩近づいたのだった。

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