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【イカレ竜・R18】もふもふ王国への野望(2)

 母様はあまり知られてはいないけれど、獣人の国ゾルアースの王家出身だ。  当然その実家となれば王家筋。僕は母様の実家にしばらくの間身を寄せる事になっている。 「アンテロ、いらっしゃい。大きくなったね」  母様に似た銀の耳に銀の尻尾を揺らした狐族の祖父が、僕を見つめて柔らかな瞳に涙を浮かべる。何度も訪れているのに、未だにこんなに快く歓迎してくれるのだ。  本来獣人の寿命は人族とさほど変わらず、百年も生きれば立派なくらいだ。けれど祖父殿は数百年を生きている。それというのも、伴侶に選んだ相手が長寿だからだ。 「アンテロ、来たのか」 「祖母殿、お世話になるね」  祖父殿から遅れて姿を現した人に、僕は朗らかに笑う。  祖父殿の伴侶は魔人族、最も長命な種族の一つで、その寿命は優に千年はある。結婚した時、寿命の長い方に合うとい神の加護の元、祖父も長命となったのだ。  そのせいで、実の兄達を看取る事にもなったのだが、それでも伴侶と寄り添って生き、今も実兄達の系譜を見守る。そういう、優しい祖父殿だ。 「お前、本当に獣人から伴侶を得るのかい?」  祖母殿が呆れたと言わんばかりの顔で言う。こういう所が母様と似ていて、僕は好き。人によっては性格がきついと言われるようだけれど、変に隠し事をしない祖母殿をカッコいいと僕は思っている。 「勿論。そのつもりで、僕は祖母殿の屋敷に度々遊びにきていたのだけれど」 「まったく、物好きな奴だ。まぁ、いいさ。お前に好意的な奴らを呼んでいる。相手はよく選べよ。一人を選ぶなら思わせぶりな態度など取るな。ハーレムなら、パワーバランスと相性を間違えるな。選び間違えば、ハーレム内部で血を見るぞ」  母様と全く同じ警告をしてくる。祖父殿もそれには頷いて、苦笑していた。  その夜、祖父殿は小さなパーティーを開いてくれた。集まったのは普段から祖父殿を慕う王家筋の中でも、僕に好意を持っている者達だ。  長く生きている事と人柄があって、祖父殿は人望がある。特に若い者は一度くらい、祖父殿に悩みを打ち明けに来るのだ。そういう相手を祖父殿は快く受け入れ、寄り添って話を聞いている。そういう祖父殿を慕って、今も人が来るのだ。  とは言え、これはひっそりと僕の嫁探し。祖父母は最初に挨拶するのみで、後は奥へと引っ込んでいる。  僕はと言えばソファーに座り、それとなく人の流れを見ている。 「アンテロ様」  真っ先に声をかけてきた人物を見て、僕は密かに目を細めた。  柔らかなクリーム色に近い金髪に、大きな青い瞳を輝かせる兎族の青年は、穏やかでどこか愛らしい表情にほんのりと赤みを帯びて近づいてくる。身長は僕と変わらないくらい高いけれど、表情の愛らしさと垂れた長い、白い兎耳がとても愛らしい人物だ。 「キャロル、久しぶりだね」 「はい、お久しぶりです。前にお会いしたのは、二年くらい前でしたか」 「あまり経っていないね」 「竜人族からすれば、そうなるのですね」  そこはかとなく「寂しかった」というように、大きな青い瞳を曇らせる兎族のキャロルは、切なげにこちらを見てくる。  そんな彼に笑い、僕は隣に彼を招いた。  キャロルの事は、正直に好ましい。柔らかく穏やかな香りは側にあるだけで落ち着ける。だからと言って欲情がないかと言えばそうではない。この青い瞳が情欲に濡れ、白いはだが桜色に染まる事を想像すると、ゾクリと欲が疼くのだ。

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