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第29話
***
そう言えば俺、レンさんのこと何も知らない。
ふとそんな事を思った。
でもセックスするだけの仲なのに、いろいろ詮索しすぎても嫌だろうしな。なんて…。
と言うか、レンさんって何のお仕事やっているのだろうか。 この前は会社の前で待ち伏せしていたし、いつも会う時はラフな格好だ。
まさかニート…なわけないよね? 高そうなお店にも何度か連れて行ってもらって、いつもお会計はレンさんが払ってくれる。
店主さんとも仲良さそうだったからきっと常連なのだろうけど…
だとしたら、どこかのお坊ちゃんなのか…?
それだと色々マズくない? セックスして男に金を貢いでる(?)なんて知られたら…!
「遠野くん、ちょっといいか?」
「え!? あ!はい!」
色々考え事をしていたが、ここは職場だ。
部長に呼ばれ、部長室に入る。
一体なんだと言うのだ。俺は自分なりに仕事はこなしてきたつもりなのだが… なにか問題でもあったのか?
待てよ…。俺がハッテン場にいた事がバレたとか…!?
「これはとても大切な話だ。よく聞いてほしい」
「は、はい!」
ドキン、ドキンと鼓動がうるさい。
「実は… SNOW DROPの社長と会合があるんだが… 相手社長が君一人を寄越すようにと言っているんだ」
「え!?なんで俺なんですか?!」
「それはこっちが聞きたいよ。とにかく、今日の6時指定した場所で待っていてくれ」
部長にSNOW DROPの社長の名刺を渡された。名刺の裏には恐らく社長が書いたであろう綺麗な文字が並んでいた。
『6時 ○○駅前』
それだけが書かれていた。
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