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第30話
SNOW DROPとは、有名な大手企業の名前である。本当は『本橋株式会社』という建築デザインを主とした会社だったが、5、6年前に派生として生まれたのがこの『SNOW DROP』という社長の息子が経営する会社だった。
息子もやり手でここら辺のビルは殆どその息子の所有するビルらしい。
「いいかい?遠野くんはニコニコして社長のご機嫌取りするんだよ。出来れば契約も結んでくれたら有難いけれど、無理はしなくていいから」
「は、はい!頑張ります!」
失礼します、と部長室から出てため息をついた。
な…なんで俺が…!? 俺みたいなペーペーの新入社員じゃなくて、もっとベテランの先輩はたくさんいるのに、なんで俺なの?!
しかも会合なのに、1対1って聞いたことないし… 考えるだけで胃が痛い…
えっと、確か名前は…『霜月 蓮』さん
あ、『蓮さん』で思い出したけど、レンさんに今日は会えないって連絡しておかないと。また会社の前で待ち伏せされたら困るし。素早くメッセージアプリを開いて、今日は会えないと打つ。
ため息をつきながら自分のデスクに座ると、いきなり隣からドーンとタックルされた。
「遠野、SNOW DROPの社長と会合なんやて?」
「痛っ!…もう、情報行くの早すぎない?ほんとに伊東の情報網どうなってんの?」
「ふふふ、秘密♡」
隣のデスクで作業していた同期の伊東がちょっかいを出してくる。
同期入社で、見るからにテンションが高そうな伊東とは何だかんだ仲良くしている。性格は全く違うが、伊東のコミュ力のお陰なのだろう。
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