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別れ

「…ゲンジ…」  霊安室の中。そこで物言わぬ夫と再会した美青年オメガ、ハズキはその目を潤ませ始めた。 「この子は、お前が残したこの子はオレがしっかりした男に育てるから」  少し前、不慮の事故で死別した男に別れを告げたハズキは男の子供を宿していた。  後日、ハズキは産気付いた。 「…ッッ…」  それからたまたま近くにいた人に救われ男児を産んだハズキは病院で自分の子供に視線を移した。 「リゲル…」  助産師の腕の中で産声を上げているリゲルにハズキはその顔を綻ばせた。 「元気な男の子ですよ」  リゲルを抱いている助産師はそういうとハズキの腕にリゲルを抱かせた。  それから一人でリゲルを育てながら働く…という生活をし始めたハズキは後日、過労で倒れた。 「…ここは…」  病室の中。そこで意識を取り戻したハズキは刹那、看護師に気がつきましたかという言葉をかけられた。 「今、先生呼んで来ますね」看護師はそう言うとその場を離れた。 「確かオレはリゲルをベビーシッターに預けた後ノーパンしゃぶしゃぶに行って…」  ノーパンでしゃぶしゃぶを提供する店で働いているハズキは刹那、現れた医師、キサラギに視線を移した。  ―――男感のある美貌。赤色灯のような瞳。黒水晶のような髪の毛。長身で憮然とした表情をその顔に浮かべているアルファ、キサラギは書類を片手にその口を開いた。 「ハズキさん、アナタ子供がいるオメガですよね?」淡々とした口調。深紅の瞳で目を見られながら事実を尋ねられたハズキはずっと感じていなかった感情を覚え動揺し始めた。  数日前、一生再婚せず時折ゲンジの墓参りをしながら生きよう…と決めたハズキはキサラギにトキメいた自分に驚くと同時に失望した。  ゲンジが死んで間もないのに…。  それからキサラギに自分が死んだらリゲルも死ぬという事を再認識させられたハズキは後日、市役所の中にいた。 「…エ…そんなに貰えるんですか?」  職員の姿やカウンターがある。そこでその目を輝かせたハズキは子供がいる独身のオメガだけが貰える養育支援金が予想より多い事を知りその顔を綻ばせた。 「…助かります~」  職員から支援金を貰う際そう言いその顔を綻ばせたハズキはゆとりのある生活をし始めた。  同じ頃、キサラギは病院の中にいた。

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