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そばにいた君は 2

俺は物心ついた頃から好きな相手がいた。 それは幼馴染の男だった。 そいつは健人という名前だった。 子供だった俺はすぐに母親に言った。 「健人とけっこんがしたい」 母親は笑って冗談めかし言った。 「もう、健人くんは男の子でしょ」 子供だったけど、俺が求めているのはその言葉じゃないんだと本能的に感じた。 「ちがう、ちがうんだ、お母さん」 自分の気持ちが分かってもらえない悔しさで頭がいっぱいになって俺は涙を流した。 自分は本気なんだと、何でそんな笑うのだと、 子供ながらに伝えたかったんだろう。 俺は母親に恵まれていたのだ。 母はすぐに、俺の気持ちを察し 「じゃぁそれは誰にも、言っちゃダメよ。 裕也の胸の奥に閉まっておきなさい。 お母さんと裕也だけの秘密。」 俺は母親のその言葉を、高校生になるまで守っていた。 母親以外の誰にも俺の想いは伝えなかった。 年を重ねるにつれ、男は女を好きになると知った。 俺のこの想いはおかしいのだと理解した。 「母さん、俺、健人が好きなんだよ」 「知ってるわ、何回も聞いた」 「伝えたい」 高校生入り、俺の想いは今まで以上に大きく重いものになっていった。 「伝えて、必ず幸せになれるかわからないわ。 裕也にとって辛く悲しいものになるかもしれない。 それでも、それでも大丈夫?」 「大丈夫、俺は、強くなったから」 絶対に、俺は大丈夫だと母親と約束した。 したのに、現実はこうだ。 その場から逃げ出して、もう戻れないと悟り、 そして次の日から俺は健人を避けた。 弱かったんだ。俺はこんなにも。 こんな俺を母さんは笑顔で受け入れてくれた。 「大丈夫、貴方は強い子よ。 だって、言えたじゃない。結果がどうなるか分からないけど、自分の想いを告げれたじゃない。 それだけで、貴方の恋心は充分に価値のあるものになったのよ。 失恋の一つや二つ、お母さんも体験したわ? 誰だって体験する。 辛いけど、悲しいけど、これだって恋愛なの」 母さんはいつだって俺の味方でいてくれた。

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