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暁斗さんのシャツを着て、暁斗さんの枕に顔を埋めて、下半身丸出しの俺。
「あ... きと... さ... ... ... っ!?」
「... えーっと?これはどういう状況かな?」
それは言い訳なんて許されない、そんな状況だった。
慌てて下半身から手を放し起き上がる俺に、ゆっくりと近付く暁斗さんはやけにニコニコしていて、それがなんだか怖いと感じてしまう。
「よ、夜に帰ってくるんじゃ... !?」
「うん。だけど早く響くんに会いたくて頑張ったんだ。... 可愛くて大好きな響くんが寂しがってるんじゃないかと思ってね。」
「そ、うだったんだ... 」
「だけどまさかこんなことしてるとは、ね?... 俺が早く響くんに触れたくて我慢してたのに、まさか自分でシちゃうとは、予想外。」
責めてるんじゃないよ?そう言いながら暁斗さんはネクタイを緩め、ベッドの端に座った。
「で?イケたの?」
「え... ... ?」
「見たところまだって感じかな?」
「あ... の、えっと... ?」
そしていつか見た、意地悪なあの顔で暁斗さんは俺に言った。
「ね、一人でイクとこ、見せてよ」
ヒヤリと背筋が凍るようなその言葉。
冗談じゃない、と分かったのは暁斗さんが舐めるように俺を見ていたからだ。
「一人で... って... ... む、無理!そんなの無理!」
「でもシてたんでしょ?俺が帰ってくるの待てないくらいに。」
「それは暁斗さんの匂いが... っ!」
「匂い?... ああ、だからシャツ?」
「っ!」
「俺のシャツ着て、欲情したとか最高に可愛い。... だけど一人でイクところの方がもっと可愛いだろうなぁ。」
暁斗さんはそう言いながら着ていたシャツを脱いで、俺が着ていたシャツを脱がせた。
暁斗さんは半裸、俺は全裸の状態だ。
「はい、これ着て?」
「... ... っ、え」
「こっちの方が匂い、ついてるんじゃない?」
そう言って掛けられたシャツは、確かに暁斗さんの匂いでいっぱいだった。
残されたシャツよりさっきまで着ていたシャツの方が残り香があるのは当たり前。
そしてその匂いが俺を更に欲情させた。
「ねぇ響くん。」
触れるだけの優しいキスを落として、すぐに離れてしまう暁斗さん。
「出張頑張った俺に、ご褒美ちょうだい?」
そう言って微笑んだ暁斗さんは、俺に拒否権なんて与えてくれなかった。
✳✳✳✳✳
「んっ... ふ、... ... ぁ、」
「顔見せて?」
「や... っ、むり... っ」
「お願い。響くんの顔、見たい。」
枕を背もたれにして、暁斗さんと向かい合って股を開く俺。
M字開脚っていうんだっけ?まさか男の俺がこんなことをする日が来るなんて、想像もしなかった。
それも暁斗さんの『お願い』で、無理だと言っても何故か身体は素直に言うことを聞いてしまう。
「... っ、ずるい、暁斗さん... っ」
「かーわい。」
何もかもが丸見え、そんな中で暁斗さんは俺に『一人でイって』と言うのだ。
... 恥ずかしさのあまり手を動かすことなんてろくに出来ないのに、暁斗さんの視線が刺さるようで苦しいくらいなのに。
「っ、んん... ... 、ふぁ... っ」
「そこ、好きなんだ?」
「んっ、ちがっ... 」
「でもさっきからそこばっかり擦ってる。」
「あ、ん... 、あきとさ... っ」
「だーめ。ちゃんと一人でイッて。」
根元よりも先端、そこが俺の気持ちいいところ。早くどうにかこの状況を脱出したくて、そこばかり弄っているのは確かなんだけど、おかしいことに絶頂を迎えるほどの気持ちよさには辿り着けない。
「は、ぁ... っん、やだ... むりっ、むりぃ... !」
「無理じゃないでしょ?... 今までも一人でイケなかった訳じゃないんだし」
「だけど... っ、なんか違う... っ、んん」
「何が違うの?」
「あ、わかんな... っ、はぁっ、」
何が違う?どうしてイケない?
気持ちいいのは確かなのに。
暁斗さんに見られてるから... ?
一人でシていた時からもうだいぶ時間が過ぎた。
一時間、いやそれ以上かもしれない。
頭は欲求でいっぱいなのにもどかしくて、どうにかして欲しくて俺の手が暁斗さんへと伸びる。
「あきとさん... っ、おねが... っ、イキたい... 」
「... ... だーめ。」
「も、むりだよぉ... っ、あきとさんっ」
「... 響くんが一人でイケたらいっぱいシてあげるから。俺を欲情させて?」
伸ばした手の指をいやらしく舐める暁斗さん。
ドクン、と心臓が跳ねて、全身が熱くなる。
ピチャピチャとわざとらしく音を立て、指に唾液を絡ませる暁斗さんの視線は俺を向いたまま。
舐められる指を見ると、舌の動きに夢中になってしまう。
「っん、ぁ、あっ、あきとさんっ」
あの舌が俺をなぞった場所を思い出す。
唇、歯列、自分の舌... 、首筋に鎖骨、乳首に腹... ...
そうすれば、まるで今その場所を舐められているように感じて、ますます熱が上がっていく。
さっきまでイケる気なんてしなかったのに、暁斗さんに触れられた瞬間快感が増して、弄る手はもう止まらない。
「はぁ、ああっ、も... っ、イク... ... っ!!」
そんなこと言わなくたっていいのにーー
律儀にタイミングを口にしてしまう俺を褒めるかのように、暁斗さんは口に含んでいた俺の指をヂュッと吸い上げた。
「っ、ああああっ... !!」
ピュッ、ピュッ、と弾け飛ぶ白い液体。
俺の欲望そのものが放たれた瞬間、身体の力がガクンと抜ける。
「... ... 上手にイケました。」
肩で息をする俺を見る暁斗さんは、満足そうに微笑んでいた。
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