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「な... ... なんだったんだ... ... ?」
三木さんの姿が見えなくなってから、俺は言われた通り甘口のルーをカゴに入れて会計を済ませた。
何故俺の名前を知っていたのか...
ますます謎だけど、でもなんとなくあの人は 暁斗さんに好意を持って近付くような人じゃない、そう感じた。
暁斗さんも部下って言ってたし... 。
そんなことよりカレー作りだ!
スマホで時間を確認するとちょうどお昼。
夜までまだ時間はあるからゆっくり作ればいいだろう。
足早に暁斗さんのマンションに戻り、合鍵で部屋に入り俺はキッチンに立った。
ぎこちない包丁使いで皮を剥けば、身がどこなのか分からなくなってじゃがいもは小さくなるし、ニンジンは迷った末に1本にしたら少ないし... やたらと牛肉とルーの色の主張が激しいカレーにはなったけど、二時間かけて俺の手料理はなんとか完成した。
炊飯器の使い方は知ってたからセットはバッチリ。付け合わせにサラダも作ればよかったかなぁ、なんて思いながら、スーパーでカレーの材料と一緒に買っておいたブラックコーヒーに口を付けた。
カレーが仕上がると、途端にやることが無くなって暇になってしまう。
テレビもこの時間じゃバラエティなんてやってないし、昼寝って気分でもない。
暁斗さんのいないこの部屋は、俺一人じゃ広すぎて寂しさすら生まれてしまう。
(... ... あ、あれ暁斗さんの... ... ... )
そんな俺の視界に入ったのは、暁斗さんが寝るとき着ているシャツだった。
暁斗さんって、私服も仕事のときも変わらずシャツ姿がほとんどなんだよな。
本人曰く、パーカーとかスエットとか、そういう服は苦手なんだとか。
それなら暖房付けて薄いシャツの方が楽って言ってた。
置きっぱなしのシャツに手を伸ばすと、ブルーベリーの匂いが微かに残っている。
俺の大好きな、暁斗さんの匂い。
早くこの匂いに包まれたい。暁斗さんが恋しくて仕方ない... ... ... 。
(ちょっとだけなら、いいかな... ?)
本人がいないことなんか分かりきってるのに、部屋をキョロキョロ見渡してから俺は着ていた服を脱いで、暁斗さんのシャツに腕を通した。
身に付けた方が近くで感じられる匂い。
会いたい気持ちが加速して、袖に鼻を擦り付けてしまう。
(... 暁斗さん、早く帰ってきてよ... ... )
シャツを着ているだけなのに、暁斗さんに抱き締めてもらっているような錯覚に陥る。こんな俺は重症なのかな。大好きで胸が苦しい。
もっと暁斗さんを感じたい、そう思うと自然に寝室のベッドの上に足が向かっていた。
いつも暁斗さんが眠るその場所は、中央より左側。俺が右側で眠るからなんだけど、そこはシャンプーの匂いが残っていた。
ベッドの左側に横になると、いつもとは少し違う景色、そして暁斗さんの匂い。
ーーこうしていると、あのエッチを思い出してしまう。
(っやば、思い出して勃つとか!!)
まだ新しい記憶が蘇るのなんて、あっという間。もちろん身体はちゃんと覚えていて、俺の下半身は徐々に元気になっていく。
こんなのただの変態じゃないか、そう思うけれど大きくなったそれを鎮めるには抜いた方が早いだろう。
この匂いに包まれた俺に、我慢なんて言葉は効かない。
それに暁斗さんが帰ってくるまでまだ時間はたっぷりある。
そう思えばズボンと下着を脱ぐことに抵抗なんかなくて、俺は枕に顔を沈めたまま何年振りかに自身のそこを握った。
暁斗さんの残り香を嗅ぎながら、暁斗さんの触れ方を思い出すとすっかり大きくなった下半身は、もっともっと、と言うかのように蜜を出す。
「っ、は、... んっ、」
『誰もいない』
そのことが俺を大胆にさせたのか、自慰で出すことなんて無かったはずなのに声が漏れる。
欲求不満を感じてもすることなんて無かったのに... 暁斗さんの匂いだけで発情するなんて考えもしなかった。
... ... ... だけど。
クチュクチュと水音を響かせながら、いくら激しく上下に動かして必死に欲を吐き出そうとしても、一度あの快感を覚えた俺は中々イケなかった。
「っ、ゃだ、イキたいのに... ... っ!」
暁斗さんはどうやって俺をイカせてくれた?
... キスして、平らな胸を愛撫して、それからここを握ってくれた。それから... ...
思い出すと、後孔がキュンと絞まるのが分かった。
ココを触らなきゃイケないの... ?
嘘だろ、そんなはずない。だってまだ数えるほどしかそこを触ったことはないのに...
「... ... ... ん、いたっ!」
だけど欲に溺れた俺は、自分の指をそこに這わすしかなかった。
一度も触れたことのないその場所。
暁斗さんしか触れたことのなかったそこに、ゆっくり指を入れてみようとすれば痛くて少しも入らない。
暁斗さんが入れる時は異物感や圧迫感はあるものの、入らないってことはなかったのに。
「っなんで、入らないの... っ!」
イキたい、その気持ちが焦りに変わり、握った手のスピードを速めてなんとか指を入れようとする。
なのに痛みでほんの少ししか指は入らない。
気持ちいいところはもっともっと奥なのに、そこを触ることは出来ないまま。
それに自分でするのと暁斗さんがするのじゃ全く気持ちよさが違う。
「やだ... っ、暁斗さんっ、暁斗さん... !」
お願い。早く帰ってきて。
俺に触れて俺をイカせて。
無意識で暁斗さんの名前を呼んだ、その時だった。
「ただいま、響くん!」
何の前触れもなく開いた寝室のドア。
そして聞こえたのは、愛しい暁斗さんの声だった。
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