2 / 12
中華料理1
「タマちゃん。中華は好き?」
ニコニコと微笑みながら、竜蛇が聞いてきた。
「はい。てゆうか、キライな食べ物ってないです」
「そう。よかった」
鉄平は今、竜蛇の高級車に乗せられている。
この日、鉄平は竜蛇に志狼と三人で晩ご飯を食べに行こうと誘われていた。
志狼は仕事帰りに直接店まで来ると言うので、竜蛇が鉄平を迎えに来たのだ。
助手席には、いつものように若頭の須藤がいた。
須藤と鉄平は一度会っている。
「こんばんは。須藤さん」と、ニッコリ笑って挨拶をした鉄平に、須藤も好感を持っていた。
あの志狼が本気でこの少年と付き合っている事は意外だった。見るからにカタギたし、平凡な少年だ。
組長の友人の色男は、蛇堂組のシマの男娼をしょっちゅう食っていたのだから。
だが、物怖じせず竜蛇と話す鉄平を見ていると、妙に納得もしたのだった。
「あ!」
信号待ちの間に鉄平が声をあげた。
「どうしたの?」
「あの、知っている人が……」
鉄平が指差したのは、横断歩道を渡っている佐和だった。
「相談にのってくれて、親切にしてくれたんです」
「あれはうちの下っ端の佐和ですよ」
「ふぅん……」
竜蛇は佐和を見て、面白そうに目を細めた。
「あっ」
「ちょっと!? 組長!」
信号が青に変わる前に、竜蛇はドアを開けて車を降りてスタスタと歩いて行ってしまった。
ともだちにシェアしよう!