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後日談1
佐和が竜蛇たちと中華料理を食べた数日後。
佐和は須藤に呼び出され、ある高級マンションに来ていた。
表向きは居住用のマンションだが、実際は高級男娼たちのいる娼館だった。政治家や海外の要人、金持ち相手の高級男娼だ。蛇堂組のしのぎのひとつでもある。
訳も分からないまま、佐和はここにいる男娼達に挨拶するよう言われた。
佐和は一人一人に挨拶し、軽く言葉を交わしていく。
一通り顔見せが終わって、事務所になっている部屋に通された。
「どうだった?」
「ははぁ。やっぱり立ちんぼの男娼たちとは違いますね。皆さん、上品できれいだ」
佐和は道端で客を拾う男娼たちを取り纏めていた。だが、ここの男娼達はさすがに高級男娼だけあって、物腰や言葉遣いに品があり、皆美しかった。
「思ったことを言ってみろ」
須藤に促され、少しの躊躇いの後に佐和は言葉にした。
「ひとりだけ。気になるのが……」
「誰だ」
「香澄さん。あの人だけ、違いますよね」
須藤は片眉を上げて、続きを促す。
「ありゃあ、男狂わせでしょ。一番大人しい感じで、問題なさそうな雰囲気だけど。一番気を付けて見てなきゃいけないのは香澄さんだ。厄介なトラブルメーカーになりそうだ」
その通りだった。
政治家の息子たちが香澄を巡って殺し合いをして、父親である政治家から竜蛇に処分を依頼され、男娼に身を堕としたのが香澄だった。
その政治家も今では香澄の上客だ。
男を狂わせ、破滅させる。
香澄の持って生まれた気質だった。
「……やっぱり見込んだ通りだ」
「はい?」
佐和は男娼たちの扱いが上手い。
それに人の本質を見抜く能力がある。
こればかりは努力で身に付くものでは無い。
「お前、今日からここに住め。ここの男娼の管理はお前に任せる」
「えええ!?」
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