11 / 12
後日談2
「ここを仕切っていた奴が別の仕事で抜けるんだよ。その穴をお前に埋めて欲しい」
「へ、そんな……俺なんかが……」
佐和は焦って何か言おうとしたが、その時、ドアがガチャリと開いた。
「須藤さん、いるー?」
「おお。丁度良かった」
声のした方を見ると、黒いスーツを着たスラリとしたスタイルのボーイッシュな女が入ってきた。
ベリーショートの赤い髪に、茶色い瞳。
はっきりとした二重のきりりとした顔立ちの女だ。歳は二十代半ばの佐和と同じくらいだろう。
「この娼館を仕切っていた涼だ」
「蜂谷涼 です。あなたが佐和さん?」
「あ、佐和です。どうも」
慌てて佐和は立ち上がり、ぺこりとお辞儀をした。
「香澄がヤバいってすぐ見抜いたぞ」
「へぇ。やるじゃない」
「お前の後釜は佐和に任せる。引き継ぎ頼んだぞ」
「えっ! ちょっと、あの、須藤さん!?」
須藤は立ち上がり、くしゃっと佐和の頭を撫でて、出ていってしまった。
急な展開に唖然としている佐和に、涼が二カッと笑って言った。
「さてと。覚えることが多いよ。佐和さん」
「あ、よろしくお願いします」
涼は仕事内容をざっと説明をした。
このマンションのこと、顧客リストから男娼たちのこと……一日では覚えきれない情報量に佐和の頭はパンク寸前だった。
「あはは。あたしもこの近くに住んでるし、様子を見にくるから。それにあなたひとりじゃないし、大丈夫よ」
他にも用心棒や世話係として、組の人間が数名いた。だが、佐和の立場は彼らの上になるのだ。
ある意味、大出世だが、佐和は戸惑っていた。
ともだちにシェアしよう!