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第1話

あの日はまるで自分の体の半分が裂けるみたいに感じた。涙が溢れて地面へと落ちていく。 せめて、貴方だけは幸せになってほしかった。             「バイバイ。諒」  この春めでたく、僕は大学1年となった。 現在僕はまだ19歳で独り暮らしをしている。 地元から少しはなれたT大学を選んだので、元から駅に遠い実家を出なければならなかった。 姉や弟は僕が引っ越すまで嫌々言っていたが、 母がピシャリと叱り、渋々諦めてくれた。 父も優しく、僕がオメガだと分かったときは、 嫌な顔せずに温かく育ててくれた。 だから…せめて、良いところに就職出来るようT大学を選んだ。理由はそれだけじゃないが、父と母は涙を流して喜んでくれた。  大学の友達も出来て、それなりに良い大学ライフを送っていたが、現実はそう上手くいかない。 大学の帰り道でのこと。 雨がどしゃ降りに降ってきたので、僕は近くのお店に避難していた。 「どうしよう…。このまま待つしか。」 と諦めていたとき、目の前で懐かしいあの人が通った。 「ねー、まーくん? 僕もう帰らなくちゃだめ?」 「ああ。義父さんに怒られるだろ?」「でもー。別に許嫁なんだから良いじゃん‼」 「だめだ。俺が怒られる。」と聞きたくもなかった会話を聞いてしまった。 「…誠…?」僕はボソッと名前を呼んでしまった。しまった‼と思いすぐさま目をそらし帰ろうとしたとき、「待って‼」 後ろから諒が腕をつかんでいた。 「…離してください。佐々城君。」 僕の声から聞いたこともないような、冷たい声が出た。 「まーくん、離してあげようよ。」と合田君が腕を絡ませいった。 僕は苦しくなり、離れたい、逃げたいと思った。 「…智里。先に帰っていてくれ。この先に松元が待ってるから。」と真剣な顔で合田君を送った。 「…話すことなんか何もないよ。」と言うと、 「俺はある。」と答えた。 「発情期は大丈夫なのか?」「別に。」 「何で…首輪してるんだ?」「もう終わったんだからほっといてよ‼」と叫んだ。 雨のおかげで声は響かなかった。 「…そこまで反抗するなら、」諒は僕の口にハンカチを当て…僕は意識が遠退いた。

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