1 / 13
第1話
あの日はまるで自分の体の半分が裂けるみたいに感じた。涙が溢れて地面へと落ちていく。
せめて、貴方だけは幸せになってほしかった。
「バイバイ。諒」
この春めでたく、僕は大学1年となった。
現在僕はまだ19歳で独り暮らしをしている。
地元から少しはなれたT大学を選んだので、元から駅に遠い実家を出なければならなかった。
姉や弟は僕が引っ越すまで嫌々言っていたが、
母がピシャリと叱り、渋々諦めてくれた。
父も優しく、僕がオメガだと分かったときは、
嫌な顔せずに温かく育ててくれた。
だから…せめて、良いところに就職出来るようT大学を選んだ。理由はそれだけじゃないが、父と母は涙を流して喜んでくれた。
大学の友達も出来て、それなりに良い大学ライフを送っていたが、現実はそう上手くいかない。
大学の帰り道でのこと。
雨がどしゃ降りに降ってきたので、僕は近くのお店に避難していた。
「どうしよう…。このまま待つしか。」
と諦めていたとき、目の前で懐かしいあの人が通った。
「ねー、まーくん? 僕もう帰らなくちゃだめ?」 「ああ。義父さんに怒られるだろ?」「でもー。別に許嫁なんだから良いじゃん‼」
「だめだ。俺が怒られる。」と聞きたくもなかった会話を聞いてしまった。
「…誠…?」僕はボソッと名前を呼んでしまった。しまった‼と思いすぐさま目をそらし帰ろうとしたとき、「待って‼」
後ろから諒が腕をつかんでいた。
「…離してください。佐々城君。」
僕の声から聞いたこともないような、冷たい声が出た。
「まーくん、離してあげようよ。」と合田君が腕を絡ませいった。
僕は苦しくなり、離れたい、逃げたいと思った。
「…智里。先に帰っていてくれ。この先に松元が待ってるから。」と真剣な顔で合田君を送った。
「…話すことなんか何もないよ。」と言うと、
「俺はある。」と答えた。
「発情期は大丈夫なのか?」「別に。」
「何で…首輪してるんだ?」「もう終わったんだからほっといてよ‼」と叫んだ。
雨のおかげで声は響かなかった。
「…そこまで反抗するなら、」諒は僕の口にハンカチを当て…僕は意識が遠退いた。
ともだちにシェアしよう!