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第20話

「腕…ふと、手でか…」 ちょうどアキラの腕のあたりを抱き込むようにヨシの左腕に抑えられている状態。 ヨシの腕は自分より肉付きもよく、手もデカイ。 体格差がかなりあるから当然といえば当然だけど、片腕で簡単に行動を制限されてしまう自分が情けなくなる。 食欲だって桁違い… 同じ人間なのにこんなに差があるんだから…本当不公平だ。 そう腕をみてため息をついていると、視線を伸ばした先にヨシの左手首が目に入る。 「あ、これ…」 そこにはいく筋も皮膚を傷つけてついた痕がある。 リストカットの痕? 傷があることは知っていたけど、まじまじと見たのは初めてだった。いつも左手首はリストバンドや時計で隠してあったし…。 「……これ、どうやってつけたんだろう…」 カッターでつけた傷とは明らかに違う異質なリストカットの痕… 「一生、消えない傷なのか…」 その痛々しい傷痕、ヨシは見る度にリストカットした時のことを思い出すんだろうか… ヨシも、一度は命を断とうとするほど追い詰められたことがあるんだよな… そんな風には見えないけど… 「んー、」 不意にヨシが唸りながら動いて、反対側に寝返りをうってくれた。 「はぁ、ようやく…」 腕の拘束から抜け出せてほっとするアキラ。 ヨシを見るとまた眠ったようだ… 「どっちが寝すぎだよ」 昨日寝すぎだと呆れられたことを思い出して言いながら… とりあえず起き上がりベッドサイドに座る。 「……」 幸せそうに眠る男前な横顔を見つめ… ため息をつきながらも、布団をかけ直してやり、黒髪のヨシの頭をぽんぽんと二回撫で… 「今日だけだからな!」 そう言って、ヨシは起こさず、朝の支度をする為いったん部屋を出るアキラ。

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