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第12話
せっかくの休みだったのに無駄にダラダラと過ごし、日にちはあっという間に過ぎていき翌日。
影のイチャイチャに慣れながら巨大な鍋をかき混ぜていた。
師匠に留守番を頼まれてしまった…師匠怒らすと怖いからなぁ…
この鍋の中身は…なんだっけ、万能薬?
紫色の液体がグツグツと煮えている。
何時間かき混ぜただろうか、肩が痛い。
…早く師匠帰ってこーい。
ちょっと休憩しようと手を離すと、かき混ぜていた棒がぐるぐる回り始めた。
やばっ、師匠に殺されるっ!!
棒を掴もうと手を伸ばす。
…後、もう少し…
「やった!捕まえ…どわぁっ!!」
棒を捕まえた安心感で気が緩みそのまま滑って鍋の中に入った。
こんなベタな展開あるか!?
鍋は煮えていたのに不思議と熱くはなかった。
意識が薄れていく。
あれ…?鍋ってこんなに深かったっけ?
ゼロの影が心配そうに鍋の中を覗き込んでいたと思ったら消えた。
…なんかよく分かんないけど、眠いや…
「すまんのぅ、留守中何もなかったか?…おや?…全くまたサボって何処かに行ったのか?」
「…どうかしたんですか?オスカーさん」
「問題児の馬鹿弟子がまたサボったのです、ブライド様の気にする事ではございません」
「……おや、これは」
「ま、こんなものかね…ブライド様の依頼の品が出来上がりまして……どうかなされましたか?」
「いえ、それではいただきます」
ーーー
柔らかいベッドに包まれてぬくぬくであったかい。
可笑しいな、師匠の部屋には硬い煎餅布団しかなかった筈…
あれ…いつの間にか寝ていたのか?
やば、サボったなんて思われたら師匠にまた杖で殴られる。
俺はサボってたんじゃないんだよ!ちょっとうっかりしてただけで…
起きて説明しないと…起きなきゃ…起き…
「ん〜…にゃふぅ〜」
なんか変な声出た、周りの人いないよな?
伸びをして…変なモノが視界に映った。
…何だこれ?
黒い物体は俺の意思で動き、まじまじと見る。
鋭く小さな爪が光る。
そして…真っ黒な肉球…
「にゃにゃぁ!!??(なんじゃこりゃあぁっ!!!??)」
顔を触ると毛深くもふもふしていて、背中が見えると黒い尻尾…しかもいつもより視界が低い気がする。
お、俺…猫になっちゃったぁぁ!!??
何でだ何でだ!?原因は…師匠の鍋しかねぇっ!!
フードは猫耳だけど俺は人間なんだよ!
あわあわと顔を青くする。
師匠に説明して元に戻してもらおう!
「にゃ、にゃんにゃ〜」
ダメだ…猫語しか話せない。
それに此処は何処だ?見慣れない部屋だ。
師匠や俺の部屋みたいな薄暗くいろいろ怪しい道具があるわけでもない、小綺麗な豪華な部屋だ。
こんな部屋見た事ない。
俺はどうやらカゴに触り心地抜群の毛布を敷き詰められた中で寝ていたみたいだ。
周りを見ても誰もいない、何故か分からないがゼロの影もいないみたいだ。
誰かが俺を運んだ事は分かるが、とりあえず誰か来るまでボーッとしてる事にした。
『君、新入り?』
「?」
いつの間にかカゴの横に毛並みが綺麗な白猫がいた。
凛と立ち、俺を上から目線で見る。
同じ猫同士だから猫語が分かるのか。
…そうだ、ならこの猫にいろいろ聞けばいいじゃん!
ちょっと話しづらそうだが、人は見た目じゃないよな!うんうん。
俺は低姿勢で白猫に近付く。
『あ、あの〜ちょっと聞きたい事があるんですけど』
『なんでアンタみたいな野良猫、ブライド様は拾ってきたのかな?』
『………』
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