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第13話
ダメだ、敵意むき出しで話にもならねぇ…
それにこの猫、ブライド様って言ったか?…え、あのブライド?
ブライドとはゼロの次に人気のNPCだ。
銀髪で赤目で綺麗系の男前でこれまた女の子が好きそうなキャラだ。
彼はゼロと真逆で有名だった。
白騎士団の団長をしていて、黒騎士団の団長であるゼロとは不仲で会う度睨み合っている。
よく分からないが一部の女の子には人気があるらしい…喧嘩する男が好きなのか?
光の騎士と呼ばれ、聖剣を使う。
剣士の職業を選ぶとブライドが師匠になるみたいだ。
そして何より結婚しやすいキャラと呼ばれている。
俺がゼロにあげたような…あれほどではないが、ブライドはSRアイテム1つあげればすぐに99%の好感度になる。
SRじゃなくてもNでも10個あげれば充分に上がる。
そして彼はチョロい男と呼ばれるようになった。
ちなみにNアイテムでも焦げた炭なんかは好感度が上がらないよ…アイツが特殊なだけだ。
他のNPCがなかなか落ちないとか、早く結婚したい女の子は皆ブライドに行くらしい。
なんでこんな詳しく知ってるかというと、ブライドはなんと!レイチェルちゃんのお兄さんだから!
そりゃあ好きな子の身内は知っておかないと!俺の将来の義兄になるわけだし…
…しかし、少し心配事もあった。
それは…
ガチャッと部屋のドアが開きブライドはやって来た。
俺の隣にいた猫は凄い猫かぶりを始めてブライドの足元に寄りすりすりと身体を擦っている。
ブライドはしゃがみ白猫を撫でた。
騎士服が白いから一瞬白猫を見失った。
…ゼロとは本当に真逆だな。
「ミー、ただいま…クロもただいま」
え?クロ?もう一匹いた?
キョロキョロ周りを見るが、それらしい猫はいない。
首を傾げているとブライドはこちらにやってきて頭を撫でてきた。
…そういえば、視界に映る前足が黒い…鏡がないから分からないが…俺黒猫なのか。
ブライドは俺のところに来て顎を触る。
人間だと分かんなかったけど、意外といいな…
はっ!!猫になっている!?
いかんいかん、俺は人間だ…俺は…
「クロに似合う首輪買ったんだよ」
そう言い見せたのは青いリボンの中心に鈴が付いている首輪だった。
俺、飼われる!?
俺は人間だと訴えてもニャーニャーというのは鳴き声しか出ない。
今のブライドはもしかしたらゼロと同じような危険人物かもしれない。
ブライドから逃げようと広い部屋を駆け回りベッドの下に潜り込んだ。
ブライドは追いかけてベッドの下を覗き込む。
「クロー、怖くないよー…」
「シャー!!」
威嚇して近付かないようにする。
ブライドは超猫好きとして有名だった。
だから猫アイテムをあげるととても喜び、猫耳なんてした日には男女関係なく口説いてくる(しかし男は結婚出来ないから「女の子だと思った」というセリフが最後に付く…まぁ勘違いだ、その先は勿論ない)
俺もゲーム内で猫耳ローブしててよく口説かれたな…脳内でレイチェルちゃんに変換してスルーしてたけど…それにしても似てない兄妹。
今の俺は猫だ、ブライドに飼われたら何されるか分からない!
本物の猫だと性別関係なさそうでさらに怖い。
ブライドが猫じゃらしを持ってフリフリと動かしている。
ふっ…本物の猫じゃないんだ…そんなので俺が釣られるわけ…うずうず
「にゃあ!」
「おかえりー」
猫という生き物は悲しいものだ。
猫じゃらし一本で簡単に釣られるなんて…ブライドがチョロいとか言えなくなったな。
抱きかかえられ、ふかふかの毛布のカゴの上に戻された。
あーあー、これがレイチェルちゃんだったら天国なのになぁ…
やる事がなくて毛並みを舐める。
時間が経つと本物の猫になったりしないよな?
「ちょっと待ってね、首輪付けたらごはんにしようね」
ごはん…さすがにキャットフードは抵抗あるぞ!?
俺が怯えないように素早く首輪を付けられた…早っ!
さっきから視線が痛いと思ったら、白猫がずっと俺を睨んでる。
…飼い主奪うつもりないんで、末長く幸せになって下さい。
ブライドは俺の食事を用意しようと部屋を出ようとドアを開けたところで俺は頭で考えるより足が勝手に動いた。
今までぐうたらしていたのが嘘のように素早く動き駆け出した。
「あっ、クロッ!!」
ささっと部屋を脱出した。
とりあえず物陰に隠れよう。
ブライドは部屋を飛び出し俺を探そうと周りを見ながら反対方向に向かった。
ブライドが見えなくなりすぐに物陰から出て走る。
早く帰って師匠に謝って戻してもらおう!
猫語しか話せないけど、きっと師匠なら俺だって分かるはず!
…分かるよね?
なんか急に不安になってきた。
猫の足で何時間掛かるか分からないが、諦めないぞ!
だってこんな姿じゃレイチェルちゃんを口説けない!
…いや、猫の姿で可愛がられるのもありか。
ちょっと揺らいだがブライドの声がして逃げる。
ブライドだけはダメだ、なんか猫に対してヤバそうだから!
ちょっと休憩しつつ赤いカーペットの廊下を走り回る。
そして誰かにぶつかり動きを止めた。
……イテテ
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