1 / 33
第1話 文:あおい 千隼
事の発端は元カノが口にした腐女子発言。一度でいいから男同士の絡みが見てみたい、単なる好奇心だろうが馬鹿なとを言ってくれたものだ。
おかげで俺は男としてのプライドを、伊吹によって砕かれてしまう───
俺たち三人は幼馴染だ。登校するときも図書館に行くときも、遊ぶときだっていつも行動を共にしてきた。
けれどいつからだろう、俺たちの間に薄い壁ができたのは。表現することの難しい、微妙な空気と言えばいいのか。
それも歳を重ねるにつれ、理解することができた。
たぶんそれは男と女という単純なものだ。森羅万象より宿る性に対する目覚め、異性を求めるよう神は人を設計した。
いつしか友達の枠から女として意識するようになり、程なくして彼女とつき合うことになる。別れたあとも変わらずの関係で、俺はこの腐れ縁というえにしを大切にしたい。
そしてもうひとり。俺たちとはまた違う壁を築き上げた男、沖元 伊吹を忘れてはならない。こいつは誰にでも優しく、笑顔の大安売りが趣味のような男だ。
伊吹も彼女のことが好きなのだと取り違え、焦った俺は彼女に告白をしたわけだけれど……。
思い返せば俺が一喜一憂するたび、伊吹の態度は如実に語っていたように思う。
"いつか碧都の泣き顔が見てみたい"と。
ともだちにシェアしよう!