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第2話  文:めろんぱん

   そもそも俺は伊吹について誤解をしていた。  チビの頃、近所の悪ガキにおもちゃを奪われては「貸してあげたんだ」とへらりと笑って、その後でこっそり泣いていた。だから俺が取り返してやったりしていたんだ。  その時点では、伊吹は完全に俺の子分だった。  それなのに小学校高学年になる頃からにょきにょきと伸びた背とどんどん男前になっていく顔、そしてその顔がふんわりと花が綻ぶように微笑むものだから、いつのまにか伊吹は女の子にモテモテ。  更には元々本好きで賢く運動神経も悪くなかった伊吹は、男子からも一目置かれる存在となっていた。  そんな伊吹が、俺の隣にくっついてくるのが、俺は堪らなく気持ちよかった。 「碧都、碧都。」  チビの頃から変わらない調子で俺の名前を呼びながら俺の隣に来て、伊吹は俺の半歩後ろでへらへら笑って他愛のない話をする。  俺はそれを適当な返事で躱すけれど、元カノで幼馴染の海乃は違った。 「もっと真剣に聞いてあげなさいよ!折角伊吹が話してくれてるのに!」  そう言って俺をそっちのけで伊吹と楽しく話し始めるから、伊吹が海乃を好きになってもおかしくない。  女の子にモテモテな伊吹が海乃に告白したら、彼女もときめいてしまうかもしれない。  そう思うのは自然なことだろう。  女子曰く優しい笑顔でへらへら笑いながら、まさかずっと俺のことを狙っていたなんて思うはずがないだろう。  そうだ、俺は間違っていない。  間違っていたとすれば、俺は伊吹のことをどこかで未だに子分のように思っていたことだ。

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