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第3話 文:蜜鳥
きっかけは些細なこと。
学校帰りにコンビニに寄った時の事だ。
(やばっ、お金足りない)
チュロスと炭酸飲料を持ってレジまで行ったところで財布に殆どお金が入っていない事に気付いた俺は、内心焦っているのを隠して、ジュースだけにすると伝えた。
修正処理が面倒なのかレジの子は少しむっとしたけれど、黙ってチュロスをよけたところで海乃が覗きこんできた。
「お金ないの?貸してあげよっか、あ奢ってあげる!」
上目づかいに何やらわくわくした顔で見上げてきた。
「いいよ、別にお腹空いてないし」
「まぁいいじゃない。あたしが買ってあげる!」
伊吹と俺がひと気のない店の裏のベンチに座ると、スマホを片手にした海乃が前に立ってもじもじしながら言った。
「はいチュロス。あたしのお願い聞いてくれる?」
「え?なに」
思いっきり警戒している俺の横で伊吹はあいかわらずマイペースで、1リットルの紙パックにストローを突っ込んで飲んでいた。
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