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第4話 文:笹野ことり
海乃は、チラリと伊吹を見た後、俺の前にチュロスを差し出しながら、話し出した。
「あのね……、二人にお願いしたいことがあるんだ……」
「俺たち二人?」
「そう。碧都と伊吹じゃないとだめなの!」
伊吹の顔を覗き込むが、海乃が俺たちにお願いしたいことがあると言ってるのにも拘わらず、顔色一つ変えずに俯きながら、さも興味なさげに紙パックのジュースを飲んでいる。
再び目の前の海乃に視線を戻すと、いたずらっ子のような笑みを俺たち二人に向けていた。
その海乃の笑顔に、不安気に顔が歪む。
「はっ?俺と、伊吹じゃないとダメなことってなんだよ。海乃のそのワクワクした顔って、嫌な予感しかないんだけど……」
「ほら、チュロス買ったんだから受け取ってよ」
無理やりチュロスを押し付けられ、つい受け取ってしまう。
「ちょっ……。海乃っ!」
「碧都、それ受け取ったんだから契約成立ね!」
「契約もなにも説明聞いてないし、そもそも俺OKなんてしてないし。なぁ、伊吹も嫌だよな?」
伊吹はストローから口を離し、いつものへらへらとした笑顔を蒼都に向けながら言った。
「もう、僕は海乃ちゃんのお願いに『いいよ』って返事したんだ」
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