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第5話 文:春日すもも
「は? なに、勝手に返事してんだよ。俺に相談もなしで」
そもそも、自分に相談もなしに勝手に決められて、それで契約成立だなんて、自分のプライドが許さない。
もとから、誰かにおごられるのだって好きじゃない。それが例え、元カノである海乃相手でも、だ。
「まぁ、いいじゃない。たいしたお願いじゃないよ」
「だからっておまえが勝手に成立させんなよ」
「それもそうだね。ごめんごめん」
伊吹は、謝りながら、また、へらへらと頬を緩ませる。お決まりの『笑顔の大安売り』だ。こいつは、笑っていれば許されると思っているんじゃないだろうか。
「で、どんな契約なんだよ」
「さっそく聞いちゃう?」
手元のジュースを、じゅうーっと音を立てながら伊吹が飲み干した。
「聞くに決まってんだろ」
こんな風にもったいぶられたら、ますます気になってしまうし、苛立った気持ちが、言葉を荒くさせる。自分だけが知らないという状況が、どれほど苦痛なものか、伊吹はわかっているのだろうか。いや、むしろ、わかっていて焦らしているような気がしてならない。
「あのね、見たいんだって」
「何をだよ」
「俺と、碧都がさ」
「だから、何をだよ!」
「セックスするとこ」
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