33 / 33

最終話  文:はち須哉太

 …でも、これからどう接したらいいのだろうか。俺達の関係は昨日までとは違う。 「な、なあ…」 「ん?」  恐る恐る伊吹に問うてみることにした。 「…俺達ってさ、恋人、なのか?」 「…碧都は、どうしたい?」 「え?」  伊吹は俺に問い返すと、立ち上がって浴槽に入ってきた。自然と足を曲げ、向き合う形になる。 「どう、したいって…」 「碧都の望む形でいいよ。  …でも、友達には戻りたくない」  そう呟く碧都の表情は険しく、眉間にシワが寄っている。  先程も言っていた気がする。友達でいるのが苦しいって。俺は伊吹の気持ちに気付いてやれなかった。そして俺は抱かれて、こいつの気持ちを知った今、戻れるとは思っていない。  戻りたく、ない…かも。  伊吹の特別になれて嬉しくないわけがない。 「…すぐ慣れないけど…恋人に、なれたらいいか、も」  途切れ途切れの俺の言葉に、伊吹の表情はぱあっと晴れていく。  そして突然抱きしめてきた。 「嬉しい…!碧都、大好きだよ…今までも、これからも…!!」 「く、苦しいって」 「…ねえ、碧都」  俺の耳元に唇を寄せ、ふっと息を吹きかけてくるからぞわぞわっとする。 「…な、なんだよ…」 「…もっかいだけ、いい…?」  甘えるような、胸がきゅうっと締め付けられるような声で囁かれると、俺はもう、首を横に振ることなんて出来なくなる。  伊吹は多分、俺がこういうのに弱いってことを分かってやってるんだと思う。  それでも、首を縦に振ってしまうんだ。 「…いっかい、だけだからな」 「うん…大好きだよ、碧都」  碧都の目をじっと見つめて返事を待つ。  仕方ない、言ってやるか。  碧都は伊吹の耳元に唇を寄せてすっと息を吸ったーーー。 -fin-

ともだちにシェアしよう!