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最終話 文:はち須哉太
…でも、これからどう接したらいいのだろうか。俺達の関係は昨日までとは違う。
「な、なあ…」
「ん?」
恐る恐る伊吹に問うてみることにした。
「…俺達ってさ、恋人、なのか?」
「…碧都は、どうしたい?」
「え?」
伊吹は俺に問い返すと、立ち上がって浴槽に入ってきた。自然と足を曲げ、向き合う形になる。
「どう、したいって…」
「碧都の望む形でいいよ。
…でも、友達には戻りたくない」
そう呟く碧都の表情は険しく、眉間にシワが寄っている。
先程も言っていた気がする。友達でいるのが苦しいって。俺は伊吹の気持ちに気付いてやれなかった。そして俺は抱かれて、こいつの気持ちを知った今、戻れるとは思っていない。
戻りたく、ない…かも。
伊吹の特別になれて嬉しくないわけがない。
「…すぐ慣れないけど…恋人に、なれたらいいか、も」
途切れ途切れの俺の言葉に、伊吹の表情はぱあっと晴れていく。
そして突然抱きしめてきた。
「嬉しい…!碧都、大好きだよ…今までも、これからも…!!」
「く、苦しいって」
「…ねえ、碧都」
俺の耳元に唇を寄せ、ふっと息を吹きかけてくるからぞわぞわっとする。
「…な、なんだよ…」
「…もっかいだけ、いい…?」
甘えるような、胸がきゅうっと締め付けられるような声で囁かれると、俺はもう、首を横に振ることなんて出来なくなる。
伊吹は多分、俺がこういうのに弱いってことを分かってやってるんだと思う。
それでも、首を縦に振ってしまうんだ。
「…いっかい、だけだからな」
「うん…大好きだよ、碧都」
碧都の目をじっと見つめて返事を待つ。
仕方ない、言ってやるか。
碧都は伊吹の耳元に唇を寄せてすっと息を吸ったーーー。
-fin-
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