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◇ 翌週、僕は川崎くんとボルダリングに来ていた。 彼はやはり運動神経抜群なようで、初めて一時間も絶たないうちにもう僕と同じ中級者向けのコースを登っていた。 そして川崎くんはかなりこれを気に入ったらしく帰り際にはジムのメンバー登録をしていた。 「来るとき僕も誘ってくれる?」なんて軽口叩いてみたら「あたりめーだろ」とあっさり返されて思いがけず赤面させられた。 「……綾瀬さ、なんで俺がスポーツ好きってわかったの?」 「前も言ったじゃん。体育やってるときの川崎くん見てたから」 「それだけ?」 「それだけだよ」 「……。綾瀬、手ぇ繋いでくれる?」 返事をするのは野暮だと思ったから、僕はすぐに川崎くんと手を繋いだ。 めっちゃ街中だし周りには人も多いし目立たないと言ったら嘘になる。 まぁ、いいだろ。基本知らない人しかいないし。僕らを邪魔する権利は誰にもない。 「うっ、わ、……」 「何だよ?川崎くんが繋げって言ったんじゃないか。ていうか僕も繋ぎたかったとこだったし」 「そ……、~っ……!」 うつむいた川崎くん。 ……かわいいなあ。 川崎くんは、色んな顔をする。色んな感情を見せてくれる。そしてそれを知ってるのは多分僕だけ。 こんな魅力的な川崎くんと手繋いでる。 あー、世界中に自慢したい。 僕が想いにふけっていると「あやせ」と小さな声が聞こえた。 「……君って、天然っていうかポジティブっていうか……バカっていうか」 振り返ると川崎くんはそっぽ向いてなんか言ってるけどもう気にしない。 彼のこれは照れ隠しだとわかっている。 「うん?なに?聞こえない」 「……。…ありがとう」 僕らは堂々と手を繋いだまま駅までの道を闊歩した。 僕の調教は、どうやら上手くいったらしい。 −了−

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