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第54話
ゆっくりと、優しく指が抜かれる。
「そろそろ、挿れンぞ」
「………うん」
そっと瞼を開ければ、身体を起こして体勢を整えたハイジが、自身のものを握り込む。
立てていた片膝を顔の方へと押し上げられ、先程まで指で愛撫されていた秘部がハイジに曝かれる。
「すげぇ、絶景」
「……ゃだ」
「や、じゃねぇだろ」
抵抗せずに漏らせば、口の片端を持ち上げたハイジが、嬉しそうに言う。
張り詰めて、大きく育ったハイジの怒張。その先端が宛がわれ、息を吐きながらキュッと目を瞑る。
ズズ……
指よりも太いソレが、慎重に奥まで挿ってくる。その圧に、思わず息を止めてしまうけれど。熱くて硬いその肉茎を感じながら、柔く瞼を持ち上げる。
……はぁ、はぁ、
余裕のないハイジの顔が、ぼんやりと視界に映る。
「その蕩けた顔……堪んねぇ」
「……」
「一生、オレだけにしか見せンなよ」
膝を押し上げている方の足を肩に掛け、反対側の手で僕の中心を握り込む。
「……っ、!」
奥を突かれたまま、前を扱かれるのは初めてで。その本能的な刺激が強くなるにつれ、ハイジとの間に距離が出来てしまってるようで……
「だめ……、」
「……何でだよ」
両手を下に伸ばし、その動きを阻止しようとする。と、その手をパシンとはね除けられてしまう。
「……、」
上手く、言葉で言えなくて。ハイジを見つめながら、小さく頭を横に振る。
……怖い。
何でだか解らないけど、凄く怖い。
拒絶されたショックはあるものの、それだけじゃなくて。漠然と湧き上がる不安が一体何なのかが、……よく解らなくて。
「……」
手を胸の上に引っ込め、目を伏せて耐えていれば、抱えていた僕の足をベッドに下ろしたハイジが、僕の上に覆い被さる。
まるで、心臓と心臓を近付けるかのように。
「悪ぃかった。怖がらせちまって……」
「……」
「もう、しねぇから」
ハイジの吐息が、柔く鼻先に掛かる。
甘蜜に濡れた瞳。僕の横髪に指を差し込み、優しく頬を包み込む。
「……ん、」
ただ、それだけで。胸の奥に広がっていた闇のようなものが消えていく。
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