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第55話
──ギッ、ギッ、ギッ、ギッ、
律動と共に軋むベッド。
上下に揺さぶられる身体。
それは──つい最近の、僕に縋り付くような抱き方じゃなくて。
初めて身体を重ねた時と、何処か似ていて。でも、それだけじゃなくて。
酷く優しくて……腹の奥が、熱い。
はぁ、はぁ、はぁ……
鼻先に掛かる吐息。
下腹部が疼けば、僕の腸壁 を擦る怒張の形をハッキリと感じる。
「……ッ、クソ!」
少し速い抽挿を繰り返しながら、蕩けた瞳が強く閉じられ、ハイジが小さく吠える。
「もぅ、もたねぇ……」
苦しそうに吐き出し、僕を掬い上げるようにして背中の下に両腕を差し込んだハイジが、強く抱き締める。
……ハァ、ハァ、ハァ、
揺さぶられる視界。
天井にある、迷宮の出口のような四角い窪み。その中心にぶら下がる、煌びやかなゴールドのシャンデリア。瞼を薄く閉じれば、その光の線が四方八方に伸びて輝き……まるで、天空から射し込む陽光のよう。
「……さくら」
耳元で響く、ハイジの切ない声。
「さくら……」
もう一度僕の名前を呼び、乱れた呼吸を繰り返しながら頭を擡げ……陽光のようなそれを遮って、僕の顔を覗き込む。
「愛してる」
トク、ン……
切なく濡れて、揺れる瞳光。
真っ直ぐに向けられる、熱い視線。
微かに掠れ、囁きにも似たその声は……僕の心の奥へゆっくりと浸透し、染み渡るように静かに広がっていく。
「……愛してる、さくら」
強く腰を打ち付けながら、もう一度、今度はハッキリとした声で。
煌々と輝くシャンデリアの光が、ハイジの輪郭を取り込み……揺れるハイジの無機質な毛先の一本一本を、黄金色に染め上げて、輝きを増していき──
「……」
とても綺麗な筈なのに。それはまるで、人成らぬもののように映り……
「愛してる……」
交差する吐息。
戸惑いながらハイジを見つめていれば、柔く閉じた瞳が迫る。
パンッ、パンッ、パンッ──
先程よりも激しい抽挿 。辺りに響く淫らな水音。ギシギシと軋むベッド。
僅かに開いた唇が、僕の唇を塞ぐ。
「……」
──嬉しい、筈なのに。
ハイジの吐いたその言葉は、まるで永遠の別れのようで。
しっとりと汗ばむハイジの背中に腕を回し、不安を打ち消すように縋り付いた。
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