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第65話

一通り買い物が終わり、同じ商業施設内にあるカフェに入る。 木の温もりが感じられる内装。パーティション代わりの観葉植物。少し落とした暖色系の照明が、お洒落な雰囲気を醸し出している。 「はぁ、流石に疲れたね」 「……」 「さくらくんはさ、甘いもの好き?」 メニュー表を開き、ハルオがさらりと尋ねる。 「ここのパンケーキ、美味しいって評判らしいよ。一緒に食べてみない?」 「……ぇ……」 優しげな笑顔を向けられてしまい、何となく断りづらい。 「色んな種類があると迷うよね。何か希望ある?」 「……、いえ」 「じゃあ、これにしようか」 僕が答えないでいると、ハルオが独断で決めて店員を呼んだ。 二つ重なった、厚めでふわふわのパンケーキ。ミントを飾ったホイップクリームは高く巻き上げられ、その足元には、フルーツソースの掛かったベリー系のフルーツが添えられている。 「……先、食べていいよ」 中央に置かれた皿が、スッと僕の前に寄せられる。 ハルオを見れば、珈琲を片手に僕の様子をじっと眺めていた。 「……」 見られて緊張する中、ナイフとフォークを使って手応えのないパンケーキの端を切る。 昨夜までは、これからどうなるんだろうと不安でいっぱいだった。……けど、ハルオが優しそうな人で良かった。 きっとハルオは、人に対しての執着心というものが無いんだろう。 セフレの人に対する態度に、最初は冷たくて嫌な感じがしていたけど。……多分、わざと自分から悪役を買って出たんだと思う。僕を上手く巻き込んで、自分を諦めさせる為に。 生クリームとベリーソースの付いたパンケーキの欠片を、口に含む。 くしゅ、しゅわっ、と口の中で溶けて……不思議な食感。 「………美味しい」 思わず、声が零れてしまう。 「よかった」 視線を上げれば、目を細めたハルオが穏やかな表情で僕を見つめていた。 「あの……」 意を決して、口を開く。 「泊めて貰う間、僕に出来る事はないか、ずっと考えていたんですけど。 ……その、料理くらいしか、思いつかなくて」 おばあちゃんが僕に教えてくれた、生きていく為の料理。 人に出せる程のものではないけど…… 「……へぇ。さくらくん、料理できるの?」 「はい」 「それじゃあ、お願いしようかな」 片肘をついたハルオが、嬉しそうに微笑む。

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