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第66話

結局あのあと怒った様子の五十嵐くんに捕まって、僕らはそのまま生徒会室へと連れてこられた。 ああ……、どうして僕は授業も出ずにこんな所に……。いや、食堂でゆっくりしてたからなんだけど。 声には出さずに心の中でため息をつく。壁にかけられた時計をちらりと見ると、5限目開始の時間はとうに過ぎていた。4人はゆうに座れるソファで僕の左隣には五十嵐くん、右隣には風見くんがいる。 誰が五十嵐くんの横に座るかで生徒会の人達がだいぶ揉めたけど、彼が僕を強制的に置いたのだ。「良いだろ!俺たち親友なんだから!」という言葉と声音とは裏腹に食堂からずっと掴まれたままの手首が容赦なくギリギリと締め付けられて、痛い。下手したら折られるんじゃないかと思うと、ろくに反論できなかった。しかも他の人から見たら本当にただ掴んでるだけに見えるようにしてるんだから、わざとなんだろう。 僕、そんなに五十嵐くんの気に触るようなことしたかな……。だめだ、考えても思い浮かばない。 座ってる間もソファに縫いとめられた左手が逃がさないと言ってるようで、困惑する。ズキズキとした鈍痛に考えることをやめた所で隣から話しかけられた。 「真咲も一緒に来るだろ!」 「え、……っ」 「な?」 「……う、うん」 なんのことだろうと一瞬思う。きつく握られた手と口は笑ってるのに、笑ってない有無を言わせない雰囲気に僕は頷く他なかった。

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