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第65話
届いた料理を黙々と口へ運ぶ風見くんを目の前にして、僕は少し固まっていた。昼休み特有のゆっくりとした空気感の中、どこか遠くで先程の上の階へ登っていった五十嵐くんへの不満の声が聞こえてくる。
確かに2階席に行くのは嫌だったし、こうして静かに食べられるのは嬉しいけど、どうして風見くんと一緒に食べる流れに……?いや、でも、ああ言ってくれたのは風見くんだから当たり前と言えば当たり前、なのかな。昨日とか朝はそれどころじゃなかったから気付かなかったけど風見くん食べ方綺麗だなあ……。
「……藤代、ぼーっとしてっけど食わねえの?考えごと?」
「風見くん食べ方綺麗だなあ、って」
「……」
ぐるぐるとまとまりきらない思考を放棄しかけたところで箸を止めた風見くんが話しかけてきてぼんやりしたまま応えた。黙ってしまった彼を不思議に思い、数瞬遅れて口からこぼれた言葉に気付く。いったい自分はなにを言っているんだと焦りながら風見くんを見やると僅かに目元を赤く染めて視線を逸らしていた。
「…………照れてる?」
「藤代が急にんなこと言うからだろ……忘れろ」
「ふふ、ごめんね」
「いいからもうとっとと食え」
少し拗ねたように聞こえる声音が、可愛いと思って僕は自然と微笑んでいた。
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