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第64話 side.風見

結局歩は双子に挟まれたまま食堂へ着くと、当然のごとく役員用の2階席へ進もうとして俺は足を止めた。同じように隣で立ち止まった藤代に目をやると顔面蒼白でガッチリ固まっている。いたたまれなさに小さく溜息を吐いて前方を行く歩に声をかけた。 「おい、歩」 「なんだー!?」 「……俺ら普通に下で食うから。行くぞ、藤代」 「えっ」 「はあ!?ちょ、待てよ賢二ー!」 叫ぶ歩はそのまま無視して目を白黒させている藤代の背を軽く押して促した。状況が飲み込めてないのかもつれそうになる足をどうにか動かしているのを見て急ぎそうになるのを堪える。 「2階席行くの嫌だろ。とりあえず落ち着け」 「え……あ、うん」 藤代の背を支えたままの手をいつ外そうか逡巡する。小さいし細いとか、言ったら怒られそうな……実際に藤代が怒るかは置いといて、目線の下にある形のいい旋毛を見やる。なんとはなしに見ながら頭一つ分以上違うんだから当たり前かと1人納得した。 どっちかって言うと口に出しても曖昧に笑って困らせそうだな。 すとんと収まった考えを置いて適当に見つけた空いてる席を指して座るか確認をとれば藤代は小さく頷いた。

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