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第20話

そこから自身の片手を差し入れれば、肌と肌が触れ合って……脳内へと快感物質が押し流されていく。 「随分と、可愛く誘うんだね……」 その手の甲に手のひらを重ねられ、誘導されながら更に上へと滑らせていく。 必然的に、大きく捲り上げられる布地。その下から覗く、桜色の小さな蕾。ひんやりとした空気に触れ、ふるっと小さく震える。 「……んッ」 甘い蜜を含む視線が、露わになったその膨らみを真っ直ぐ捕らえる。 ただ……それだけで。 下肢の中心に熱が集まり、後ろと視姦されたソコが期待で疼く。 「俺に、どうして欲しい?」 小さく動く形の良い唇。そこから吐き出される、意地の悪い質問。 熱くて柔らかな吐息のベールが、羽毛の如くふわりと肌を擽り、産毛を揺らしながら消えていく。 「……ぁあ、ん″……」 ただ、それだけで。 堪らず身を捩り、鼻に掛かったような甘ったるい声が溢れ出てしまう。 「……」 いや、だ…… ……こんなの、僕じゃない…… おかしい…… 何か、……ヘンだ…… 頭の片隅の方で、まだ理性の残るもう一人の自分が警鐘を鳴らす。 ……まさか……キスの時…… 何か、入れられた……? ふと思い出されたのは、咥内を弄る樫井の舌先。頬裏に、粘着性のあるものを練り付ける感覚。 それは──ペースト状のキャラメルのようで。そこから甘ったるい味が次第に広がり、匂いが鼻から抜けていって…… 「──ッ、!」 ぶるるっ…… 曝かれた乳首に樫井の唇が近付き、熱い息を吐かれれば……それまでの思考を奪い取られ、堪らず身体が粟立って戦慄く。 「触って欲しい?」 「……」 「それとも、しゃぶられたい?」 そう囁いた唇の隙間から、チロリと顔を出す舌先。焦れる僕の乳首を根元から掬い、舌根に絡めながら舐り、口に含む。 「──ゃ″らぁっ……!」 その刹那、快感が一気に脳内へと押し流されていく。 ビクンッ、と身体が反応し大きく跳ね上がる。 漏れ出てしまう声を(こら)えようと、唇を固く閉じ、自由な方の手の甲で口元を覆う。

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