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第24話

真っ暗闇の中──妖しげなピンク色に光る桜の花びらが、ひらひらと舞い落ちる。 それは、仄暗い川面へと落ちた瞬間、光を失う。 ……流されていく。 ゆらゆらと揺られながら、自分の意思などを持つ事も許されず。 やがて、萎み。薄い茶褐色に汚されて……沈む。 「……ッき、……す、きぃ……はぁ、っ……ん、あぁぁあ″ぁ、……っ!」 まだ、水面に浮かんでさえいれば……その美しさに、掬い上げてくれる人がいたかもしれないのに。 ……もう、汚れてしまった。 最後の砦だった|精神《こころ》でさえも、思い通りに操られて。 何の抵抗も、できないまま── 「……ああ″、ぁあぁあっ……ああ″──ッ!」 沈む、……沈んじゃう── ……助けて…… 僕を、掬い上げてよ……竜一…… あの日──崩れ落ちていく僕の身体を、力強い大きな手で引っ張り上げ、支えてくれた。 ……だけど…… こんなに汚れてしまった僕を、掬い上げてはくれないだろう。 きっと……どんなに望んだとしても。 ……もう、二度と─── 「……アゲハ」 弛緩し、横たわる身体。 二本の足の隙間から白濁液が垂れ流れ、そのせいでシーツがしっとりと濡れてしまっている。 無防備に裸体を曝け出し、放心しきった僕を覗き込んだ樫井が、そっと横髪に触れる。 「嬉しいよ。……アゲハもずっと、同じ気持ちでいてくれたなんて」 「……」 知らぬ間に、口走ってしまったんだろう。 上機嫌の樫井が、愛おしそうに微笑みながら手櫛で僕の横髪を梳く。やがて薄く目を閉じ、迫る唇。 「……ふ、…ぅん、…っっ、」 その割れ目から、甘っとろい唾液が注ぎ込まれ、僕のと入り混じれば……つぅ、と口の端から溢れ伝う。 こんな時にまで、身体が反応してしまうなんて……何だか滑稽だ。 やけに上機嫌の樫井を、ぼんやりとした視界に収める。 殆ど反応を示さない僕に、欲望を取り戻した樫井が下半身を擦りつける。 「……もう一回、シようか」 残酷な台詞が、耳元で囁かれる。 「……」 一体、いつになったら……満たされるのだろう。 僕の身体も、精神も支配して……思い通りの結果を、もう生み出したというのに。 ズ、ズズ…… 再び後孔に押し込まれる、張り詰めた怒張。最奥を突かれる度に、無理矢理そこから快感を掘り起こされる。 ……ズッ、ズッ、ズッ、ズッ、 だけど…… もう殆ど、腰から下の感覚は……ない…… 「……っん、」 再び唇を塞がれ、苦しくなっていく呼吸。 ……もう…… 何もかも、どうでもいい…… いっその事、このまま沈んでしまいたい。 誰の目にも触れる事のないほど…… ───深くて、深くて、……真っ暗な………闇の底に。

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