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第5話
流石プロというべきか、それから先は手際がよかった。
虎次の服を全て脱がし、筋肉を撫でつけられ、性器に触れて来る。社畜人生で一人で処理する暇もなかった所為か、強めに握って少し擦り上げられて呆気なく達すると、男はくすりと笑ってくるので、無性に気恥ずかしくなる。
「敏感ですね、おにーさん」
「うるせえ、」
「大丈夫、あっという間に気持ち良くなるから」
多分ね、と囁いて、虎次が出した白濁を纏わり付かせた指で、硬い窄まりに触れてくる。初めての感触に息を呑んで身体を強張らせると、男は虎次の耳を舐めてきた。くちゅりと孔までを舐め取られて、つい身体の力を抜くと、その瞬間に、ずるりと指が挿れられて目を瞠る。何度も抜き差しをされるのに奥歯を噛み締めて堪えた。
――死ぬよりマシ死ぬよりマシ死ぬよりマシ、
「――ッ、ひ、ぁ!」
念仏のように頭の中で唱えているときだった、男の指が、奥の一点に触れてきて、虎次の頭がちかちかする。強い快感を覚え、混乱する虎次に、男は笑った。
「そこ、気持ちいいでしょ。癖になるところ」
「ッ、ん、や、め、やめ、やめろ、」
「あ、そんなこと言っちゃうんだ?」
「――ッう、ぁ、あっ、」
足をばたつかせて抵抗をしようとしたとき、二本目の指が無理矢理肉壁を掻き分けて入ってきて、奥の一点を二本の指先で挟まれる。其処での快感を知り尽くしたように弄ってくるから、快感の波に呑まれそうになる。
「っふ、ぁ、」
「もう少し」
ぐちゅりと音が立ってきた頃、三本目も入れて中を丹念に解される。三本の指が難なく行き来出来るまで馴染んできた頃、ゆっくりとその指が抜かれた。
「は、あ、は、ふ、」
「そうそう、息、吐いていた方がいいですよ」
「え、え、」
「ナマだけど大丈夫、俺、じゃない、僕、幽霊なんで」
にこ、と綺麗に笑った男が、すっかり屹立した性器の亀頭を、虎次の後孔に擦り付けて来る。流石に恐怖を覚えて引き掛けた腰を引き寄せられ、そのまま、ぐ、と中に入ってきた。
「っひ、あ、あ、いた、いたい、」
「っは、流石に狭いな、」
「――ぅ、あ、っ、ふぁ、っは、」
声にならない吐息しか出てこない。
屹立した性器は指とは比べものにならない質量で、虎次の下腹部を犯す。どくどくと脈打つ肉棒がゆっくりと押し込まれる圧迫感に、眉根を寄せ、無意識に力を入れてしまう。男も眉根を寄せ、呼吸をしている。
「入った、」
「う、そ、うそだ、」
「ウソじゃない、ほら、ここまで俺の、」
下生えがつく程に男の性器を全て飲み込んでしまうと、男が満足げに息を吐く。信じられない虎次の、膨らんだ下腹部を指先で撫でて、男は目を細めた。
「あんたの中、熱くうねって、いい、」
「キャラちがくね、ッぁ、あふ、んっ!?」
「はい、動きますよー。捕まっててね、」
好悦と呟く男にぼそっと突っ込むと、その間にぐんと突き上げられてしまう。衝撃に目を丸める虎次の腕を持ち上げて、男の背中に回される。ゆっくりと引き抜かれ、早く押し込まれる。その度に身体が揺すられて、たまにイイトコロを擦り上げられると、強く締め付けてしまう。
「ぁ、は、ふ、――ッ、う、んんっ、」
「イっていいよ、俺も、」
「ちょ、待っ、待て、――ぁ、あぁッ、!」
そのリズムに合わせて前も扱かれれば、突き抜ける快感に我慢することもままならず、身体をびくびくと震わせて白濁を吐き出す。強い締め付けに抗えず、男も、虎次の中に全てをぶちまけた。
「っは、あ、は、はふ、」
「は、……最高ですよ、お兄さん」
「うる、せえ、っは、あ、」
「ね、もう一回、」
「――は? ウソだろ冗談、やめ、ぁ、あっ、」
――その後も、彼が満足するまで何度も犯されて、眠れたのは結局、空が白み始めたときだった。
――今日の仕事は少し遅れる、バイト君に連絡をしておいてよかった。
――なんていうのは全部夢で、起きたらきっと、いつも通りの日常が待っていると思っていた。
「なんで、いるんだ、おまえ……」
しかし現実とは無慈悲極まりなく、何故か虎次のベッドの中、隣に寝転ぶのは、何も身に着けていない整った顔の幽霊だ。心なしか、顔がつやつやしている気がする。
「ふふ、成仏できなかったみたいですねえ」
「意味わかんねえええ」
「ほら、お兄さんのナカが良くて、クセになっちゃったみたいで」
「知らねえーーー」
「俺が満足するまで付き合ってもらわなきゃ」
「おいこら口調変わってんぞ」
「あっは、呪い殺しちゃうぞ」
ばきゅん、と指のピストルで撃ち抜かれ、虎次はベッドに沈み込んだ。
――奇妙な幽霊との同居生活をなし崩しに開始してしまった虎次の、明日はどうなる!?
一方で男の方は、戸惑う虎次を横目に見ながら、口許が緩むのを抑えきれない。
――いつ、ネタばらししようかなあ。
幽霊でもなんでもない、ただの生身で、恋人に捨てられ仕事も失っただけの憐れな美青年だということを、いつ打ち明けるべきか。
とりあえず今は、運命的とも言える出会いを果たしたこの男に、身も心も取り入ることを目標としよう。
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