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27 報告会からの~BONUS TRACK~

 午後四時を回った頃、女子の先輩二人と別れて、竜生(りゅうせい)(けい)はデートをそのまま継続していた。  先程四人で入ったカフェの支払いを、舞が一人で清算してくれた為、いつもより多目に持参した所持金も、まだ余裕があった。贅沢なディナーにしてもいいな、と竜生は考えつつ、立ち並ぶ店先に視線を走らせた。  その横で、不意に蛍が竜生を裏路地へと誘い込んだ。 「…どうしたの?隠れた名店でもある…とか?」  竜生が不思議そうに尋ねると、蛍の頬が紅く染まった。 「名店とかじゃないんだけど…。」  蛍が視線で指示した先には、ラブホテルの看板があった。 「…入るの?」 「入れたらね…。」  まだ十分に明るい中、二人は人目を忍んでホテルの中へ、意を決して入った。  空き部屋の写真のパネルから一室を選び、ボタンを押すと、その部屋へ入れるシステムのようだった。  そのまま、誰にも会わずに部屋に辿り着く。 「初めて…ホテル、入っちゃったね。」 「うん。…入れちゃったね。」  男同士は汚す事を前提に、入室を断るホテルが多いという。春コートの所為で体型が不明瞭だった蛍が、女の子と間違われたのか、二人の入室が咎められる事はなかった。  外部の光が届かない作りの為、室内の灯りを点けると、ダブルベッドが中央でその存在を放っていた。その横はガラス張りで、浴室がまる見えとなっている。 「お風呂…。」 「うん。…大きいね。二人でゆっくり入れるよ。」  呆然とした蛍を他所に、竜生が率先して入浴の準備をしに浴室へ移動した。  湯が溜まるまで、二人は部屋を物色して回る。ラグジュアリーに見せ掛けた調度品が揃えられ、それなりに贅沢な気分が味わえた。  合皮感が否めない二人掛けソファに並んで座ると、竜生は優しく蛍の首筋を撫でた。 「ご免ね、家で出来なくなっちゃって…。」  竜生が謝ると、紅潮した顔を隠すように蛍は俯いた。 「いや、謝らなくていいから。お母さん、帰って来てくれたのは喜ばしい事だろ?」 「そうだけど、イチャつけなくなったのは残念だよね。」  蛍は視線を、ガラスの向こうの浴室に向けた。 「今日…一応さ、準備して来てたんだけど、時間経ったし、改めて準備しようって思ってたんだ…。」  竜生は直ぐに蛍の気持ちを察した。 「ああ…まる見えだから、恥ずかしい?」   「恥ずかしいよ!」 「折角の機会なんだから、手伝わせてよ…。」  竜生が蛍の衣類を脱がしに掛かった。一瞬だけ抵抗を見せた蛍は、直ぐに大人しく竜生に身を任せた。  お互い脱がし合った処で浴室へ移動し、楕円形の広い浴槽に抱き合って入る。蛍が珍しく竜生の胸に舌を這わせ、一点に吸い付いてきた。 「あ、先越された…!」  思わず竜生は声を上げた。 「気持ちいい?」  指でも刺激を与えながら、蛍が問う。 「くすぐったいよ。」  舞から仕入れたばかりの情報を、蛍が実践しようとしているのが分かり、竜生は感じない風を装う。そして隙をみて、竜生は形勢逆転させると、蛍の胸に顔を埋めて反撃に移った。 「…あ!」  蛍は急に力を抜き、竜生の行為を受け入れると、そこに神経を集中させた。 「…これ、くすぐったいだけじゃない…よ。」 「気持ちいいの…?」 「分からない…。でも、声出そうになる…。」 「出してよ。…もっと、可愛い蛍君がみたい。」  蛍の体は全身、熱を持ち始めた。触っていない場所も、徐々に張り詰めていく。 「は…あ、…ねぇ、変になっちゃう…!」 「俺も…。」  竜生は大きくそそり立った自分のものを、蛍に握らせた。それを確認するよように、蛍は掴んで上下させていく。 「やっぱ…そこだけじゃ、ヤダ…!ねぇ、奥、慣らすから待って…!」  蛍は一旦、竜生から逃れ、浴槽を出た。添え付けのラブローションらしきものを見つけ、それに手を伸ばす。すると、竜生がそれを取り上げ、蓋を開けた。 「…やってあげる。」 「でも…!」  竜生は強制的に蛍を四つん這いにさせると、ローションを垂らし、絡ませながら、彼の中へ指を滑り込ませた。狭隘な中を擦るようにして中を確かめる。 「…大丈夫。綺麗にしてるよ。」 「…本当に?…あ、ねぇ…、なんか熱い…!…もっと、拡げて…。」  腰を突き出してくる蛍に煽られた竜生は、今直ぐにでも別のものを突き立てたくなったが、限界まで我慢する事にした。何気に蛍の股の間を確認すると、半勃ちなのが分かり、竜生は指で中から責め立てる事に集中した。  途中、ローションを流し込むように入れたり、指を三本まで増やして責め立てていると、蛍は荒い息遣いに声を混ぜ始めた。 「なんか…洩れそう…。も…やめて…。」  蛍が初めて抵抗を見せた時、グレーの床に白い液体が放たれた。  二人は動きを止め、一瞬それが何なのかを凝視する。 「嘘…!?これって…?」 「もしかして…トコロテンしちゃった?」  竜生の問に、疑問を持ったまま蛍は頷くと、指を抜いてもらい、体を起こした。 「どうだった?」 「思ってたのと違った。…なんだろ?…思いの外、絶頂感がなく、不本意に出た感じ…?」  多少、達成感を感じていた竜生とは違って、蛍は何処か納得がいかない、といった表情をしている。 「普通にイク方が、気持ちいいってこと?」 「うん。…なんで今出たのって、股間に訊きたいくらい。」  未だ半勃ちの蛍に、未だ完勃ちの竜生は気を取り直すように促す。 「そうなんだ。…じゃあ、次はメスイキに挑戦しよう。」 「あ、それ、挑戦したい!」  トコロテンに不満足だった蛍は、ベッドへ竜生を誘った。 「いつでも来て!」  受け入れ態勢万全で待つ蛍の中に、竜生は堪えきれず自身を挿入する。緩やかに往復するだけで、竜生は達してしまいそうになった。 ――あ、ゴム!忘れてる…!  失態に気付いた竜生は、迷いながらも腰の動きを止められずにいる。 ――もう、このまま…。いや、ダメだよね…。  迷っている竜生に、蛍が手を伸ばした。 「中に…出して、いいよ…。」 「…いいの?」  願ってもない許可が下り、竜生は感度を上げていく。  いつもより熱く、いつもより濡れている感じがする蛍の中に酔いしれていく感覚とは裏腹に、竜生は長く留まりたいとも切実に願う。 「あのさ…。」  不意に動きを止め、竜生は蛍の耳元に顔を寄せた。 「…男のセックスって、初体験の早さを競ったり、やった人数を自慢するのが普通って思ってた時期があったんだ。」  竜生の急な囁きに、蛍は少しだけ正気を取り戻させられる。 「何…?今、言う事?」 「ご免。…イきそうになったから、気を紛らわそうと思って。」  蛍の最奥で動きを止めたまま、竜生は蛍のものを緩く扱き始めた。 「…や…あ、竜生…!」 「蛍君を好きになって、…競うとか自慢とかが間違いだって気付いたんだ。…今は蛍君としか出来ないって誓えるよ。」  蛍が先走りを垂らし始めると、竜生は再び抜き差しを始めた。 「あ…ああ…りゅ…せ…!」  お互い高まり合った処で、竜生は蛍の中に、蛍は自身の腹部に射精した。 「蛍君…今のは…?」 「凄い…気持ちいいままに…出た…。」  放心したような状態の蛍だったが、浴室での時とは違い、今度は達成感が得られたようだった。 「あ…ご免ね、中…大丈夫?」 「うん。…今のとこ、平気。」  後日、冷静な顔で蛍は、竜生に対してトコロテンについて結論を述べた。 「半勃ちだと何で出た?感があるけど、完勃ちの状態で出ると、それなりにイイ!」                   ――終わる――

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