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終
◇
「梛原おっはよー!」
「ぐぇぇっ」
怒られると分かっていて、相変わらず突撃してくる生田。そしてその後ろに、必ず付随して立っている男、室屋。
「おはよう、梛原くん」
女子たちが漏れ無く腰を抜かしそうな、美しいと形容すべき笑顔を俺に向け迷いなく手を伸ばしてくる。
「髪、いつも以上に跳ねてるよ」
くすりと笑って、髪の根元から長い指が差し込まれた。
「寝坊しちゃった?」
「え…あ、うん、ちょっとだけ」
「やっぱり。明日から俺が起こしてあげようか?」
モーニングコール。なんて言って俺の顔を覗く室屋の顔に、思わず鼻血を出しかけた。
「いやっ、いいから、自分で起きれるから」
「そう言って、寝坊したくせに?」
顔も洗えなかった? なんて言いながら、室屋が俺の口元を指で拭った。
「ヨダレの痕、ついてるよ」
耳元でこそっと囁かれるその声に、ついに俺は血を吹き出した。そんな俺に慌てることなくハンカチを差し出す室屋。なにこれ、いろんな意味で俺、耐えらんない!
「なんだよ成一、ついにお許しもらったの? じゃあ、身代わりもお役御免って感じ?」
必死で鼻血を拭う俺の横で、生田がとんでもないことをサラッと言った。なにそれ、お前が俺の身代わりだったのか! 愕然とする俺に生田が笑う。
「コイツ、溜まりすぎてガッツくかもしんないけど許してやってな。今まで梛原に嫌われないように必死で我慢してたから」
信じられない展開にくらくらと揺れる頭を抱える俺に、室屋がまた何か世話をやいてくれていたが、俺にはもう認識する力も残っていなかった。
この日から、室屋の異常なスキンシップが初な俺を更に追い詰めていくのは、言うまでもなく…。
もう勘弁してくれ、心が壊れてしまうと泣いて懇願する俺に、「可愛い…」と嬉しそうに破顔して。優しく宥めるような口付けの前の、メガネを外すその仕草にまた腰砕けになるほど惚れ直しちゃったのは、
惚れた弱み、ってやつなのかもな。
END
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