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裏切りの代償1
「……なぁ、五千円貸してくんない?」
昂祐 が、シャツの袖を通しながらそう言う。
まだ裸のままの理巧は、昂祐の部屋のベッドから、ぼんやりと天井を眺めていた。
短い黒髪。少し太めの眉。
勲章のように幾つも耳についている、ピアス。
高身長。男らしい体格。広い肩幅、背中。
小学生のうちにピアスを空けた昂祐は、一緒に脱色したという髪だけは黒に戻したものの……ガラの悪い年上とは縁切れず、学校の問題児として教師から目を付けられていた。
一方理巧は、背が低く、童顔。
体つきも貧弱で。筋肉が無いんじゃないかと思う程、腕が細い。
大人しく弱々しい雰囲気から、昔から揶揄われたりいじめられたりしていた。
そんな理巧は、自分とは正反対の昂祐に、自分でも驚く程惹かれていた。
『お前、俺の事好きだろ』
そんなある日。
突然、昂祐にそう聞かれて。
それから、何となく……
こんな関係が……ズルズルと……
「──え」
ハッとして昂祐の方を見ると、借りるのが当たり前の様な顔つきをしていた。
「……うん」
嫌われたくない理巧は、モヤモヤとした胸の内を吐き出せず……その要求を、いつも飲んでしまっていた……
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