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軋む身体を無理矢理起こし、滑り落ちるようにしてベッドから下りる。脱ぎ捨てられたスクールシャツを拾って肩に羽織ると、鞄にあった財布から千円札を五枚取り出す。 と、待ってましたとばかりに片手が伸び、僕の手から軽々と毟り取る。 「やりぃ!」 紙幣を掲げ、感情剥き出しの笑みを浮かべる。 今日一番の……満足げな顔。 「……」 それは、声を掛けられた日から始まった。 戸惑いながらも初めてを捧げた直後、甘え付くようにして言われた──「お金貸して」。 何となく嫌な予感はあったけど、僕だけに見せるんだろう弱い部分に触れているうちに、助けたいという思いが湧いてしまって…… 三千円を渡してしまった。 いつかは返してくれる──そう、心の何処かで信じていた。 そうしなければ、僕を好きでいてくれてることまで、否定してしまうような気がして……怖かったのかもしれない。 回を重ねる毎に減っていく貯金。 幼い頃から貯めていたそれは底をつき、困り果てた僕は、とうとう塾代にまで手を付けてしまった。 そこからは、転がり落ちる一方で。両親の財布から数枚の札を抜き取り、彼に渡すまでになっていた。 恐らく、十数万円。 下手したら、それ以上。 中学生の僕にとって、それは余りにも大金で。補填する宛など全く無かった。 「ねぇ、昂祐。いつ返して──」 「──あァ!?」 尋ねようとした瞬間、昂祐の顔から笑顔が消えた。 あるのは、僕に向ける威圧感。 その殺伐としたオーラに、ビクンと肩が震える。 『……いた、い』 金を無心される日は、決まって昂祐の家に呼ばれた。 命令に従って裸になり、ベッドに仰向けになる。身体を重ねた昂祐に足を開かれ、反り返ったモノを強引に捻じ込まれる。 最初のうちは、甘い言葉や愛撫なんかもあったのに。 ……今はただ、いきなり突っ込むだけの乱暴な行為。 痛くて痛くて、苦しいだけ…… 「……どうしよう、お金」 その夜── スマホで情報を探していると、とあるアプリの一文が目に付き、親指の動きが止まる。 〈中学生男児の下着、求む。一枚三千円〉 〈条件:使用済。一人につき二枚まで。手渡し希望〉 怪しすぎる文面に、自己防衛本能が働くものの──金を工面する為には、もう後には引けなかった。

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