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学校が終わり、制服姿のまま待ち合わせ場所へと急ぐ。
最寄り駅の裏通りを少し行き、入り組んだ細い路地を斜めに入った所にある、寂れたテナントビル。他に目立った店はなく、通る人はまばら。静寂を保つそこからビルを見上げれば、指定された喫茶店の看板が見えた。
埃っぽい臭いのするエレベーターに乗り、二階へ向かう。ドアベルの鳴る喫茶店の扉を開ければ、そこは昭和の成金が好みそうな内装の純喫茶だった。
「……」
時代を感じる豪華なシャンデリア。
真っ赤なスエード調のソファ。金縁のテーブル。間仕切りに飾られた観葉植物。
通路の入り口横にある大きなライオンのオブジェは、メッキが剥がれ所々に錆びが目立つ。
ここ……僕なんかが入って、いいのかな……
ここまで踏み出した勇気が、一気に萎む。
店員が近付くのが見え、慌てて店内をぐるりと見渡す。
予め送られていた写真の男がいなければ、さっさと帰ろう。……そう、思いながら。
「──!」
ふと、僕と目が合った窓際の男性が伝票を片手に立ち上がる。振り注ぐ柔らかな斜光に照らされた頭は、写真よりも禿げ上がり、想像以上にぶくぶくと太っていた。
「……理玖くん、だよね?」
ドア付近に立つ僕に近付く店員を片手で遇いながら、男が声を掛ける。
「やっぱり生の方が、可愛いなぁ……」
「……」
湿り気のある掠れ声。
頭のてっぺんから足のつま先まで、執拗に舐め回すように見ると、ニタァと顔を歪ませる。
「ここでアレを確認されるの、嫌でしょ? 何処か別の場所に移動しようね」
店を出て、同じビルの上階にあるカラオケ店へと向かう。
何故カラオケ店なのかは不明だけど、取引を成立させる為には大人しく従うしかない。
「君、こういう事するの初めて?」
エレベーターの中で、男が尋ねる。
「……は、はい」
「可愛いなぁ。もし、今履いてるパンツも一緒に売ってくれたら、一万円出してあげるよ」
「……え……」
使用済みのパンツが、一枚三千円。
プラスして脱ぎたてのものも売るなら、合計一万円。
たったそれだけで。簡単に大金が舞い込んでしまう現実に、一抹の不安や恐怖が過るものの──
「はい……」
喉から手が出る思いで一杯だった。
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